装甲車のような恐竜ズール、頭と尾の化石を公開

ティラノサウルス類に傷を負わせた容疑者、ただいま全身クリーニング作業中

2018.12.20
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「最高クラスの標本です」と、カナダのロイヤルBC博物館の学芸員で、アンキロサウルス類に詳しい古生物学者のビクトリア・アーバー氏は語る。このズールの脇腹の装甲が破損していたことがすでにわかっており、ほかの鎧竜と争ったときについた可能性もある。

 ロイヤル・オンタリオ博物館の古生物学者でズールを研究しているデビッド・エバンス氏も、「装甲や皮の保存状態は、私たちの想像をはるかに超えて良いものです」と述べている。

運命のいたずら

 アーバー氏とエバンス氏が初めてズールについて発表すると、そのニュースは世界的に報道された。だが運命のいたずらか、数日後、同じカナダにあるロイヤル・ティレル博物館が、のちにボレアロペルタ・マークミッチェリ(Borealopelta markmitchelli)と名付けられる奇跡的に保存状態の良い鎧竜について発表した。(参考記事:「鎧をまとった奇跡の恐竜化石」

ギャラリー:奇跡の恐竜化石「ボレアロペルタ」、世紀の大発見 写真18点
公開されたボレアロペルタの頭部。タイル状の骨が特徴的だ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC)

 ただし、ボレアロペルタとズールはまったく別の種類の恐竜だ。ボレアロペルタはズールよりも3500万年以上前に生きていた恐竜で、同じ鎧竜でもノドサウルス類に属すると考えられており、尾にハンマー状の武器はついていない。また、ボレアロペルタはズールより数年早く見つかっていたことから、2017年にボレアロペルタの全体像が公開されたとき、ズール化石のクリーニング作業は始まったばかりだった。(参考記事:「「奇跡の恐竜」は新種と報告、色で防御か」

 今回のズールが死んだのは、7600万年前、現在の米国モンタナ州北部にあたる河口付近だった。あたりには、シダや広葉樹が茂り、水の中にはワニやカメが潜んでいた。浅瀬に沈んだズールの死骸は、膨らんで仰向けになった状態で流木に引っかかり、渦に巻きこまれた。そして、体の大半が短時間で砂に埋もれ、化石として保存されたのだろう。しかし、全身が残されたわけではなかったようだ。ほかの動物に食べられたのか、手足はまだ見つかっていない。

 2014年、テロポーダ社という企業の化石発掘作業員が、米国とカナダの国境のすぐ南側にある個人農場で、バラバラになったゴルゴサウルスの骨を発掘していた。そして、地下30メートルまで掘り進めたとき、固い砂岩に突き当たった。作業員は、「妙なものがあるぞ」と叫んだ。明らかにティラノサウルス類ではなかった。出てきたのは、ハンマー状になったアンキロサウルス類の尾の部分だった。

 テロポーダ社の取引客の大半は個人の化石コレクターだ。しかし、このズールの化石は特別であり、公的に管理されるべきものであることは明らかだった。そこで同社はエバンス氏に連絡し、エバンス氏がロイヤル・オンタリオ博物館に働きかけた結果、ズールの化石は2016年に同博物館の手に渡った。

 テロポーダ社の作業責任者トミー・ハイトカンプ氏は、「理想的な結果になりました」と話す。

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