キッチンで見つかるパーム油

 ひとたび台所に足を踏み入れると、あらゆる物にパーム油が含まれていた。オーガニック食料品メーカー「ジャスティンズ」のアーモンドバター(同社は持続可能なパーム油を使用)。食料品メーカー「カインド」のチョコレートバーにも、チョコレートの食感をなめらかにするコーティングにパーム油が使われている(カインド社はRSPOのメンバー)。それから、食料品メーカー「ナビスコ」の塩味のクラッカーにも、食感を良くするためにパーム油が使われていた(ナビスコの親会社である「モンデリーズ」は、WWF(世界自然保護基金)が企業の「持続可能なパーム油」の使用について行った2016年の調査で、10点満点中9点を獲得した)。

 さて、朝食には、息子はリンゴと冷凍のベリーを入れたプレーンヨーグルトと、オリーブオイルで焼いた目玉焼きを食べた。私はトーストにアボカドとマーマイト(トーストやクラッカーに塗る発酵食品)を塗って食べ、夫は残り物のご飯と目玉焼きとほうれん草を食べた。そのどこにもパーム油は使われていなかった。

 その日の朝食のほとんどは、リンゴ、ベリー類、アボカド、卵などの自然食品か、あまり色々な成分の入っていない食品だったからだ。つまり、パーム油を含む食料品のほとんどは自然食品ではなく、加工食品なのだ。

「加工された」食品は、一般に、成分表が包装に長々と記載されており、スーパーマーケットの棚に並んでいたり、ファーストフードのメニューに載っていたりする。食品ライターで書籍『パンドラの弁当箱:米国の食卓を席巻する加工食品』の著者でもあるメラニー・ワーナー氏の言う「原材料からかけ離れた」製品は、自然のままの食材から多くの工程を経ているということだ。

 ほとんどの加工食品は「自然に含まれている健康的な成分を取り除き、塩、砂糖、脂肪、人工添加物などを大量に加えています」と同氏は言う。

 多くの“超”加工食品は、大半が人間にとって少なくとも有益ではない。結論から言うと、パーム油が多く含まれているのも、これらの超加工食品であることが多い。ハロウィンのお菓子や冷凍ピザを考えればわかるだろう。パーム油の消費量を減らしたいなら、簡単な方法がある。加工食品を食べる量を減らせばいいのだ。(参考記事:「シリーズ 90億人の食 米国に広がる新たな飢餓」

「持続可能なパーム油」を目指して

 一方で、オリーブオイルから作られる石けんなど、パーム油を含まない製品もある。しかし、こうした製品が必ずしも有効とは限らない。パーム油をボイコットすることで、環境にさらなる悪影響を及ぼす可能性もある。大豆など、別の植物から同じ量の油を生産するためには、より多くの土地が必要となるからだ。(参考記事:「アブラヤシ農園、コロンビアのジャガー」

 パーム油業界とNGOの協力のもとに運営されているRSPOは、2004年の設立以来、多くの専門家から、設定している基準が低いと批判されてきた。しかしRSPOのCEO、マレーシア人のダレル・ウェバー氏は、より多くの企業が参加できるように門戸を広く開放し、活動を通じて、生態系の保護や労働者を公正に扱うことの重要性を伝えていくことが重要だと主張する。

 同氏は次のようなたとえ話をした。「私はフェラーリを運転するのが好きで、スピードを出して友人を感動させたいと思っています。しかし、フェラーリは2人乗りが多いので、基本的には自分ともう1人しか乗れません。この状態を変えたいと思ったら、バスを運転しなければなりません。みんなを乗せる方法を見つけなければならないのです」

 WWF(世界自然保護基金)や科学者団体「憂慮する科学者同盟」、米コロラド州のシャイアンマウンテン動物園などは、消費者がパーム油に関して賢明な選択をするためのガイドを発行している。食品や入浴用品、子ども用スキンケア製品などについて、少しだけでも時間をとって調べてみてはいかがだろうか。

文=HILLARY ROSNER/訳=牧野建志