DNA解析でよみがえる 忘れられた奴隷たち

米国に奴隷として連れてこられた祖先とのつながりを探る人々

2018.12.17
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「南北戦争前は、奴隷の人頭税がありました。市は予算の大部分を人頭税で賄っていたのです」とテックレンバーグ氏は話す。「自分の奴隷を罰したいが、自ら手を下したくない場合は、市に奴隷を引き渡し、代わりに罰してもらうこともできました。市はこのサービスからも収入を得ていたのです」

 テックレンバーグ氏、オフニイン氏とはじめとする市民のリーダーたちは「アンソン・ストリート墓地プロジェクト」について、過去の冒瀆(ぼうとく)を追悼へと変える絶好の機会と捉えている。米国内でも素晴らしい都市であるチャールストンを築くために尽力した知られざる人々を追悼するのだ。(参考記事:「100年間、無視されてきた黒人探検家の偉業」

 このプロジェクトは2017年、ナショナル ジオグラフィック協会「ジェノグラフィック・プロジェクト」による支援の対象となった。助成金を受けている研究者たちが協力することになっており、現在、米ペンシルベニア大学で遺骨から取り出したミトコンドリアDNAを解析し、血縁関係の有無を確認している。(参考記事:「ヒトゲノム解読から10周年」

 また、アフリカ系米国人のボランティア約80人からDNAの提供を受け、それぞれの祖先をたどった上で、アンソン・ストリートの墓地に埋葬されていた遺骨との関係も調べている。2019年2月までに結論が出る予定だ。

 ナショナル ジオグラフィックから若手向けの助成を受け、ボランティアたちのDNA解析に協力しているアデイェミ・オドゥウォレ氏は「私の両親はナイジェリアで育ちました。私の祖先が埋葬されている可能性もあります」と話す。

 こうしたつながりを発見することもオフニイン氏の活動の原動力となっている。オフニイン氏の祖父フィリップ・スミスはチャールストンでは有名な鍛冶工で、コミュニティーのリーダーだった。

「自分とよく似たDNAを持つ人が見つかったら、失われた魂が戻って来たような気持ちになります。見つかった遺骨は、私たちが考えもしなかった方法で人々を引き合わせようとしているのだと思います」。オフニイン氏の言葉だ。

ペンシルベニア大学のアデイェミ・オドゥウォレ氏(左)と研究パートナー。チャールストンのガラのコミュニティーと関連がある人々のDNAを解析している。(PHOTOGRAPH BY DR. THEODORE SCHURR, UNIVERSITY OF PENNSYLVANIA LAB OF MOLECULAR ANTHROPOLOGY)
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文=JOEL K. BOURNE, JR./訳=米井香織

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