深海に生命あふれるサンゴ生態系発見、米大西洋沖

トランプ政権が保護区指定を解除しようとする大西洋の深海底に多様な生物が生息

2018.12.13
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プロバンスタウン港で好天を待つ調査船アルーシア号。9月にはハリケーン・フローレンスが近づいたため、探査を一時中断しなければならなかった。(PHOTOGRAPH BY LUIS LAMAR, NATIONAL GEOGRAPHIC)。(PHOTOGRAPH BY LUIS LAMAR, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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「海の底には、別世界が広がっています」と語るのは、調査団に同行したコネチカット大学の遺伝学者レイチェル・オニール氏だ。

 オニール氏は、海底から採取された生物を船上でDNA解析にかけた。その結果、新種を発見し、さらには極限環境に生命がどのように適応しているかを探る手がかりも得た。

「この調査の最も重要な点は、ここにすむサンゴの生態系を繁栄させている生態適応を理解することです。サンゴは、それこそ気の遠くなるような長い時間をかけて成長します。高さ30センチのサンゴで500歳くらいになるのです」(参考記事:「【動画】深海2300mにサンゴの群体、まさかの発見」

国定保護区のなかで潜水に適した場所を探して海図を調べるティム・シャンク氏。(PHOTOGRAPH BY LUIS LAMAR, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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海からの贈りもの

 深海生物がどのように成長するかを理解すれば、保護活動の助けになるだろうとシャンク氏は言う。とはいえ、数千メートルの深海にも汚染は広がり、生態系は大きな影響を受けている。(参考記事:「深海底に大量のマイクロプラスチックが集積、研究」

「ポリ袋に缶、カーテンレール、ペイント缶まで。水深1万1000メートルでもゴミが見つかっています。考え着く限りあらゆるものが、ゴミとなって深海へ到達しているのです」と、シャンク氏。

 サンゴの体に、ポリ袋が引っかかってしまえば、サンゴはエサをとることができず、いずれ死に至る。魚から無脊椎動物まで、サンゴはさまざまな海の生きものにとって貴重なすみかだ。深海の環境がその上の海にすむ生物を支えているという事実も、最近になって少しずつ明らかになってきた。シャンク氏によると、生物が多様に生息する渓谷の上層には、クジラやイルカ、海鳥にいたるまで、大型の海洋生物も多く集まってくることが分かっている。(参考記事:「【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚」

 調査団は、2018年から翌年までの調査を通じて発見した新種を公表する予定だ。

 シャンク氏とオーシャンXの科学者リダ・テネバ氏は、深海サンゴなどの生物の研究が医療の新発見にもつながると考えている。例えば、ある種のヒトデは失った腕を完全に再生させることが可能で、臨床への応用が期待される。

 またウッズホール海洋研究所とNASAは、今回の探査で「オルフィウス号」と呼ばれる無人探査機の試験走行も行った。「バッタのように跳ねたり、海底を自在に移動できたりします」とシャンク氏。

ポリプを収縮させたParamuriceaとオトヒメエビ。(PHOTOGRAPH BY LUIS LAMAR, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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