カニグモの一種(学名:Misumenops nepenthicola)。ウツボカズラの捕虫袋の中で獲物を待ち伏せている。(PHOTOGRAPH BY WENG NGAI LAM, NATIONAL UNIVERSITY OF SINGAPORE)
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絶妙な連携プレー

 米オクラホマ大学で生物学を研究しているエレン・ウェルティ氏は、ラム氏の研究には関与していないが、じつにおもしろい内容だと述べている。

 同氏は、「異種間の関係が敵対から共生へどのように変化しうるのか。今回の研究は、その複雑な仕組みを示すものです」と述べる。さらに、カニグモは花と密接に結びつきながら進化してきたとも付け加えた。(参考記事:「食虫植物が近くの植物から虫を盗むと判明、九大」

 ウェルティ氏によると、カニグモのなかには花の上で昆虫を引き寄せるのを手伝うものもいるという。このクモは、花の授粉を担う昆虫の目につきやすい色に擬態することで、自身が載っている花をより魅力的に見せる。このように、クモがいることでメリットのある植物は食虫植物だけではない。

 ウェルティ氏の研究から、少なくとも何種かのカニグモは、植物の受粉を助けることがわかっている。「花の上にカニグモがいると、あらゆるものが吸い寄せられるという興味深い事実がわかったのです」(参考記事:「カニがイソギンチャクのクローン作り共生維持か」

究極の犠牲

 カニグモにとって、食虫植物は獲物を捕まえるのに便利なだけでなく、快適なすみかでもあるのかもしれない。

「捕虫袋の中にいれば、ほかの動物に食べられる心配はないので、とても安全な環境なのです。よくクモを狙う寄生バチの目につくこともありません」とラム氏は言う。

 とはいえ、命が保証されているわけではない。ラム氏は、捕虫袋の中で消化されているカニグモの死骸を見つけたことも何度かあったと言う。わが家の中で誤って転落死したのか、落下する前に自然死したのかはわからない。しかし最後には、みずからの体を「同じ釜の飯」を分け合った仲間に差し出すこともあるようだ。

【参考ギャラリー】紫外線に浮かぶ花々、見たことのない妖艶な姿 写真17点
ハルシャギク(PHOTOGRAPH BY CRAIG BURROWS)

文=JOSHUA RAPP LEARN/訳=鈴木和博