島民にココナッツを配るチャトパディヤエ氏。彼女が参加した北センチネル島への1991年の2度の訪問は、センチネルの人々と外部の人間の、唯一の「友好的な」接触だったとされる。(Photograph Courtesy of Madhumala Chattopadhyay)
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「19歳か20歳くらいの青年が、女性とともに砂浜に立っていました。彼は突然、弓矢を構えました。私は、その地域の他の部族の調査で覚えた言葉を使って、ココナッツを取りに来るよう呼びかけました。すると女性が青年を小突き、矢が水中に落ちました。女性に促され、彼も水の中に入ってココナッツを拾い始めました」と同氏は語る。

「その後、何人かの男性がボートを触りに来ました。その行動は、私たちを恐れていないことを示しているように思えました」。AnSIのチームは砂浜に上陸したが、センチネルの人々が集落に連れて行ってくれることはなかった。

 1カ月後、チャトパディヤエ氏はより大きなチームとともに島を訪れた。「このときは、センチネルの人々がチーム全員と馴染みになってほしいという政府の意図で、大人数となりました」と同氏は振り返る。「彼らは、私たちが島に接近するのを見ていました。その後、武器を携えずに迎えてくれました」

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森林伐採などですみかを追われつつあるアマゾンの孤立部族たち。彼らの日常を、写真家チャーリー・ハミルトン・ジェームズ氏がカメラに収めた。(Photograph by Charlie Hamilton James, National Geographic)

 水面に浮かべられるココナッツを回収するだけでは飽き足らなくなっていた彼らは、ボートに上がり込んでココナッツを袋ごと持って行った。「警察官のライフルをただの金属片と思ったようで、ライフルまで持って行こうとしました」。その後、チームメンバーの1人が、センチネル族の男性が身に着けていた葉でできた装身具を取ろうとした。「男性は怒って、ナイフを取り出しました。すぐに去るよう身振りで伝えてきたので、私たちは島を後にしました」と同氏は話す。

 数カ月後に実施された3度目の訪問は、悪天候によって上手くいかなかった。「砂浜には人影がなく、私たちは誰にも会うことなく戻りました」と同氏は振り返る。その後、政府は北センチネル島への訪問頻度を減らすことを決定した。島民は多くの病気に対して免疫を持っていないと考えられるため、外部の人間による接触は彼らを感染の危険にさらしてしまうからだ。(参考記事:「アマゾンの孤立部族、外界との接触が増える」

 チャトパディヤエ氏は現在、インドの社会正義・エンパワーメント省で働いている。アンダマン・ニコバル諸島には19年間訪れておらず、今後も北センチネル島を訪問するつもりはないという。「彼らは何百年もの間、何の問題もなく島で暮らしてきたのです。問題が生じたのは、外部の人間と接触するようになってからです」と同氏は話す。「島の人々に必要なのは、外部の人間がやってきて守ってくれることではなく、放っておいてもらうことです」

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