毎年、クリスマスシーズンのオランダでは「ズワルトピート」への抗議が起こる。一方、クリスマスの伝統を守ろうとする白人グループが黒塗りの顔を支持し、揺り戻しが起こっている都市もある。(PHOTOGRAPH BY JOHN VAN HASSELT, CORBIS VIA GETTY IMAGES)
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 1863年に奴隷制を廃止するまで、オランダは大西洋をまたいだ奴隷貿易に深く関わっていた。奴隷の人々を米国に売ったり、オランダの植民地に送って働かせたりして富を築いた。一部の貴族は、奴隷にした黒人の子どもを互いに「贈り合う」こともしていた。このような子どもたちの姿が描かれた絵画を見ると、カラフルなムーア人風の服を着ており、現代のズワルトピートの衣装に似ている。(参考記事:「苦しみの歴史に衝撃、アフリカ系米国人博物館」

 ズワルトピートの衣装が誇張された見た目なのは、米国のミンストレル・ショーの影響ではないかという指摘もある。ミンストレル・ショーは、顔を黒く塗った白人が黒人を演じるショーで、19世紀の中ごろにヨーロッパ各地を巡業した。「オランダ人は、ブラック・ピートはオランダ独自のもので、外国の人たちは我々の文化を理解していないと主張しがちです」と語るのは、社会的企業「ニュー・アーバン・コレクティブ」や、ズワルトピートへの抗議活動「キック・アウト・ズワルトピート」の共同設立者であるミッチェル・エサイアス氏だ。「しかし、これは人種のステレオタイプ化という、国を問わない因習なのです」

 エサイアス氏や、「ブラック・ピートはレイシズム」というプロジェクトを立ち上げたクインシー・ガリオ氏などの活動を受け、一部の都市や多くの学校で、聖ニコラスの祝祭で黒塗りの顔をやめる動きが出ている。今年、マクドナルドは従業員がピートの扮装をすることを禁止。オランダ警察も、2020年以降、警察内のクリスマスパーティーではピートの扮装を許可しないと発表した。

オランダでは「ズワルトピート」のキャラクターを無害な楽しい慣習として擁護する人も多いが、人種差別的・侮蔑的だとする声は、年々強まっている。(PHOTOGRAPH BY PETER DEJONG, AP)

 ズワルトピートを禁じた団体は、いずれもこのキャラクターを完全になくすのではなく、イメージを変える方法を取っている。アムステルダムのシンタクラース・パレードでは、ズワルトピートは「煙突のピート」になった。顔にすすを付け、衣装も変更されている。この“解決策”に全てのピート反対運動家が満足しているわけではないが、より侮辱的な黒塗りの顔とかつらをなくせたことを喜ぶ人もいる。いまだに昔ながらの扮装を続けているパレードの方が多いからだ。

 こうしたズワルトピートの禁止は簡単に実現したわけではない。このキャラクターへの抗議運動が強まるにつれ、ピートをなくさせまいとする白人至上主義の運動も組織だって行われるようになっている。ズワルトピートについて書いたジャーナリストが殺害予告を受け取ったり、黒塗りの顔に反対する活動家が暴力を振るわれたりした。11月には、オランダの新聞「テレグラーフ」の記事が、ハンガリー生まれのユダヤ人の投資家ジョージ・ソロス氏から資金提供を受けているとして、エサイアス氏を非難。これは、白人至上主義者による陰謀論にありがちな反ユダヤ主義の中傷だ。

 こうした非難は厄介なものだが、エサイアス氏は「これまでピートを支持してきた人たちがじっくり考える機会になればと期待しています」と話す。「ピートの側にネオナチがいるのなら、この伝統について本気で考え直すときかもしれない、と」

文=BECKY LITTLE/訳=高野夏美