超音波でしゃべるネズミの会話、スロー再生で解読

ケンカする夫婦は子育ても失敗しやすい、ネズミで解明

2018.12.11
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人間との共通点

 米国西海岸地域に生息するカリフォルニアシロアシマウスは変わったネズミだ。縄張り意識が強く、攻撃的で、単独行動をとる。けれどもそれはパートナーを見つけるまでだ。このネズミのつがいは生涯を共にするほか、ほかのげっ歯類とちがって、父親が子育てを手伝う。パルトラック氏によると、父親の協力がないと、子ネズミが生き延びる可能性は低くなるという。(参考記事:「敵のフェロモンを「盗聴」、ネズミで判明、東大ら」

 カリフォルニアシロアシマウスは、哺乳類全体を知るうえでも理想的な研究対象だ。このネズミの社会力学や夫婦関係を知ることで、哺乳類の一夫一婦制の機能や重要性、それらが不倫によって損なわれるしくみ、コミュニケーションが果たす役割なども浮かび上がってくる。

「好むと好まざるとにかかわらず、ヒトとネズミは、ホルモンについても脳についても基本的に非常によく似たシステムを持っています」とパルトラック氏。ネズミの研究は、ヒトのもつ文化的な要素を除いた哺乳類の行動について、重要な知見を与えてくれる。(参考記事:「【動画】くすぐられて笑うネズミの脳の観察に成功」

 今回、研究チームは、カリフォルニアシロアシマウスのつがいを引き離し、一方を異性のいる場所に置いた。離別が社会的な絆に及ぼす影響を調べるためだ。

 比較のため、いくつかのつがいは引き離さずにおき、またいくつかのつがいは引き離して1匹ずつケージに入れた。研究チームは、引き離したつがいを再会させたとき、どのカップルが匂いを嗅ぎ合い、あとを付いて歩いたか(これらは仲が良い証拠である)、どのカップルが格闘したり噛みつきあったりしたかを調べた。スーパースロー再生した鳴き声も調べた。

親しみの鳴き声から怒りの鳴き声まで、続けて聞いてみよう。

浮気を疑っているわけではない

 念のために言うと、研究者らは、引き離されたネズミがほかの異性と交尾をしたかどうかは知らない。パルトラック氏は、ネズミたち自身も、自分のパートナーが浮気をしてきたかどうかはわからないだろうと考えている。そして、カリフォルニアシロアシマウスが再会したパートナーとケンカをするのは、相手の浮気を疑っているからではなく、離ればなれに暮らす間にパートナーとの絆を忘れたことを示しているのだろうと言う。

 パルトラック氏の研究が行われるまで、研究者たちは、カリフォルニアシロアシマウスのさまざまな鳴き声に特定の社会的な意味があることを確信できずにいた。カルコウニス=ルペル氏は、カリフォルニアシロアシマウスの鳴き声を最初に発見したときにその可能性を予感したと言うが、今回の研究によって初めてこのことが証明され、鳴き声によるコミュニケーションと繁殖の成功との深い関わりが示された。(参考記事:「【動画】子を襲われた母ネズミがヘビを猛攻撃」

 まだわからないことだらけだが、ネズミの鳴き声の研究は、現時点での私たちの理解を大きく深める可能性がある。「こうした研究から、あらゆる行動に関する謎が解明される可能性が出てきました」とカルコウニス=ルペル氏は言う。「何しろ1300種ものネズミがいるのですから」

文=LESLIE NEMO/訳=三枝小夜子

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