皮下脂肪で体温を維持?

 まず、リンドグレン氏のチームは、非常に保存状態のいい魚竜の皮膚を分析した。そこでは、皮膚の個々の層や、腐敗によってできるしわまで確認できた。

 すばらしいのは、メラニン色素を含む特殊な細胞であるメラニン細胞の痕跡が見つかったことだ。魚竜にこういった細胞があることは1950年代からわかっていたが、リンドグレン氏のチームはまさに21世紀的な手法を使った。強力なX線分析装置を使って化石をスキャンしてメラニンを探し、3Dでメラニン細胞を再現するという方法だ。そこから、イルカを含む現在の多くの海洋動物と同じく、魚竜も腹より背中のほうが濃い色だったことがわかった。このような配色は「カウンターシェーディング」と呼ばれ、水中で見つかりにくくなるだけでなく、体温の調整にも役立つ。(参考記事:「恐竜にカムフラージュ模様見つかる、アライグマ風」

魚竜の一種、ステノプテリギウスの復元図。化石の分析から、腹よりも背中のほうが色が濃かっただろうということが新たに判明した。(ILLUSTRATION BY JOSH LEE)
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 さらに、保存されている皮膚の下に脂肪の痕跡が残されていることもわかった。化学的な分析によると、この層は混入した現代の物質や他の皮膚層のタンパク質によるものではないようだ。現在のイルカやオサガメにあるような、黄色っぽい脂肪の層だという。(参考記事:「恐竜時代の海生爬虫類は皮膚が黒かった」

 米イェール大学の博士課程に在籍する古生物学者で、化石に残された分子に詳しいヤスミナ・ビーマン氏は次のように述べる。「ほぼ間違いないものと思われます。たくさんの手法を使って分析したと言わなければならないでしょう。たいへんな作業だったのではないかと思います」。なお、氏は今回の研究には関わっていない。

 皮下脂肪が存在したということは、少なくとも、魚竜は一定の体温を維持できたことになる。魚竜がクジラやイルカなどの現在の哺乳類のような恒温動物だったという決定的証拠にはならないものの、魚竜の体温は35℃ほどだったという2010年に出た研究結果とも一致する。(参考記事:「太古の海生爬虫類は恒温動物の可能性」

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