魚竜は中身も模様もイルカに似ていた、新たに判明

1億8000万年前の化石で皮膚と皮下脂肪の痕跡を特定、ネイチャー誌

2018.12.07
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ドイツ、ホルツマーデンにある頁岩の採石場で出土した、1億8000万年前の魚竜ステノプテリギウス(Stenopterygius)。今回、ホルツマーデンから出土した別のステノプテリギウスの標本を分析した研究者グループが、初めて化石に皮下脂肪の痕跡を発見した。(PHOTOGRAPH BY BENJAMIN KEAR)
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 約1億8000万年前、現在のドイツにあたる場所で、イルカに似た爬虫類が死に、海の底に沈んだ。海底でその死骸は驚くべきほど良好な状態で保存された。そのおかげで、この古代生物がクジラのような皮下脂肪をもっていた可能性を示す初の証拠が見つかった。(参考記事:「大きな魚竜と新種の首長竜、博物館で見つかる」

 12月5日付けの学術誌「Nature」に掲載された論文によれば、この化石は魚竜と呼ばれる海生爬虫類の一種で、ジュラ紀前期に生息していたステノプテリギウス(Stenopterygius)のものだ。そこには、しわやひだまで保たれた皮膚、色素を含む細胞、そして皮下脂肪の化学的痕跡が残されていた。研究者たちはさらに、化石にはタンパク質の痕跡まで残されているとしており、議論を呼んでいる。(参考記事:「インド初、ジュラ紀の魚竜化石を発見、ほぼ完全」

「細胞レベルの構造が識別できるだけでなく、タンパク質の痕跡まで化石に残されているのです。『ジュラシック・パーク』的な話につながるようなものは、ほかにもたくさん出てくるでしょう」。スウェーデン、ウプサラ大学の古生物学者で、論文の共著者であるベンジャミン・キア氏は、そう述べている。

 今回、古生物学者たちは最小のスケールの分析に努め、大きな洞察を得た。この種の研究としては、最新の成果だ。

「この研究では、化石に保存されているものを隅々まで徹底的に分析しました。このような細かいスケールでの分析は、ここ数十年でようやくできるようになったものです」。米バージニア工科大学の古生物学者で、化石に残された分子に詳しいケイトリン・コリアリー氏は、電子メールにこう書いている。「古代生物が生きていたときの姿を想像する際に、分子古生物学が役立つ新たな一例です」

今回の研究で分析されたステノプテリギウスの写真(上)と図(下)。頭は左側にある。(PHOTOGRAPH BY JOHAN LINDGREN)
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隙間に注意

 魚竜を表す「イクチオサウルス」という言葉には、魚に似たトカゲという意味がある。魚竜は、恐竜という言葉が生まれる前から、19世紀の自然哲学者たちの想像力をかきたててきた。革のような皮膚と細いあご、速く泳げる体をもつ爬虫類である魚竜は、恐竜の時代だった中生代において、イルカのような存在だった。現在、魚竜はこの手の進化をいち早く遂げた生きものだったと考えられている。

「もともとは陸上で肺呼吸する爬虫類でしたが、わずか3000万年ほどで魚のような形になりました。このような進化を遂げたのは魚竜が最初です。イルカやクジラはそのあとでした」と、米カリフォルニア大学デービス校で魚竜について研究している古生物学者、藻谷亮介氏は言う。「魚竜は最大の目をもつ脊椎動物でもあります。また、のちに現れた種には、指の数がいちばん多いものもいます。片手に9本や10本もあったのです」(史上最大の魚竜は、英国で見つかった体長約26メートルの魚竜だと考えられている)(参考記事:「史上最大級の魚竜の化石を発見、体長約25m」

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