ギャラリー:古今東西の個性的な地図 6点(画像クリックでギャラリーへ)
1631年から1831年までに28回噴火したベスビオ火山の地図。それぞれの噴火ごとに、流れた溶岩が色分けされている。(COURTESY OF HOUGHTON LIBRARY, HARVARD UNIVERSITY)

 グーグルマップやカーナビが全盛の時代、紙の地図はもはや不要との声も聞こえてきそうだ。しかし、古今東西のさまざまな地図が収められた書籍『All Over the Map』(National Geographic刊、未邦訳)を開いてみれば、また違った地図の魅力に気付けるかもしれない。

 同書の執筆者の一人、ベッツィ・メイソン氏の自宅を訪れ、海底地図の夜明けから探査機とともに太陽系を飛び出した地図まで、地図にまつわる様々な物語を聞いた。(参考記事:「南極から月面まで、ナショジオ100年の地図」

──世界最古の地図は古代バビロニアのものと言われています。今回の本にはどんな地図を掲載しましたか。

書籍『All Over the Map』(National Geographic刊、未邦訳)(COURTESY OF NATIONAL GEOGRAPHIC)

 今回の本は、学術書でも、地図の歴史をまとめたものでもありません。それぞれの地図にまつわる物語を集めた本だと、私たちは考えています。視覚に訴える地図を選んで掲載しました。同時に、地図の製作秘話や歴史に与えた影響など、興味をそそる物語を紹介したいと考えました。3世紀に製作されたタイル製のローマ地図から、最近完成したばかりの地図まで収録しています。

──特にお気に入りの地図はありますか?

 ブラッドフォード・ウォッシュバーン氏によるグランドキャニオンの地図が、特別気に入っています。ウォッシュバーン氏は「超人」でした。ナショナル ジオグラフィックの探検家として何十年も活躍し、24歳という若さで探検隊の隊長を務め、アラスカを中心に何十回も探検を行いました。

 米ボストン科学博物館の名誉館長でもあった彼は、グランドキャニオンの谷底から岩を採取し、博物館のロックガーデンに展示したいと考えました。そこで、妻のバーバラとグランドキャニオンに向かったのですが、いい地図を探しても1つもありません。「じゃあ、もっといい地図を自分で作るしかないか」となったのです。(参考記事:「傷つけられるグランドキャニオン」

 それから8年の歳月を経て、美しい地図が完成しました。150日近くの現地調査を行い、700回以上もヘリコプターで難所に足を運びました。実地調査を終えたウォッシュバーン氏は、グランドキャニオンの絶景を寸分たがわず再現することを重視し、ナショナル ジオグラフィック協会の地図製作者に、エアブラシを使うぼかし(レリーフ)法で起伏図を作成してもらったのです。そうして誕生したのが、グランドキャニオンの美しいカラーマップです。(参考記事:「地図の物語:起伏表現はこうして進化した」

 米ハーバード大学の地図ライブラリで初めてこの地図を目にしたとき、私は思わずそこに立ち尽くしてしまいました。この地図について調べていると、ナショナル ジオグラフィック協会の資料を管理しているマイケル・フライ氏から、「保管文書の中には、この地図の作成経緯に関する資料が山ほどある」と連絡がありました。そんなわけで、この地図がどのように作成に至ったかがわかったのです。この宝の山には、ウォッシュバーン氏や関係者が出した書簡、内部メモ、領収書、使用品目リストなどがありました。それらを調べて一つのストーリーにまとめ上げるのは楽しい作業でした。この話題だけで、まる1日でも話せそうです!

──20世紀半ばには、陸地はほぼ地図に描かれましたが、海底はまだ手付かずでした。それに一石を投じたのがマリー・サープという女性ですね。

 すばらしい人物です。その功績は亡くなる前になって、ようやく認められました。サープ氏は20世紀前半には珍しい、女性地質学者になりました。第2次世界大戦が一因で、地質学を志す男性が多くなかったので、女性に門戸を開く大学院もあったのです。サープ氏は製図アシスタントの職を経て、ブルース・ヒーゼンという地質学者といっしょに仕事をするようになります。ヒーゼン氏は、船に搭載したソナーで海底までの水深データを測定し収集することを専門に行っており、大西洋、やがては世界中の海底の起伏に関するデータを集めることになります。サープ氏はそのデータを分析し、海底の起伏を視覚化する作業に着手したのです。

 サープ氏は、世界で初めて海底の構造をほぼ3次元で表現しました。ほとんどの人は、海底が平らで、これといった特徴のない平面だと考えていたので、海底の実態を目にする機会はこれが初めてでした。

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