古今東西、個性的な地図を作ってきた個性的な人々

驚きのグランドキャニオン図を作った探検家、宇宙人向けの地図を作った天文学者

2018.12.09
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ギャラリー:古今東西の個性的な地図 6点(画像クリックでギャラリーへ)
第二次世界大戦でドイツ軍の空爆によって大きな被害を受けたロンドンのウォータールーおよびエレファント・アンド・キャッスル地域。報告が入るたびに、被害の程度に応じて手で着色された。(COURTESY OF LONDON METROPOLITAN ARCHIVES)

──第2次世界大戦のロンドン大空襲では、ドイツ空軍がロンドンに爆弾の雨を降らせました。地図製作者や測量士は、チームを組んで被害の状況をリアルタイムに記録していたといいます。その驚異の地図と、当時の製作状況について教えてください。

 本当に驚くべき地図です。爆弾が降るなか、ロンドンの建築家や測量士のチームは、着弾とほぼ同時に被弾地域に赴いて被害状況を調査していました。まずはできるかぎり多くの人を助け、建物に倒壊の危険はないか、救急部隊も脱出すべきかどうか、といった判断を下しました。その後、建物を調べて「修復不可能」「全壊」「修復可能」「被害軽微」に分類しました。そして、被害を受けた建物の一つひとつをこの分類に応じて色分けし、地図に記したのです。(参考記事:「第二次大戦の空襲のエネルギー、宇宙に達していた」

 この驚異的な110枚の地図は、現在「インナー・ロンドン」と呼ばれる地区を網羅しています。とても美しい地図ですが、被害と惨事が語られているために少し複雑な気分になります。調査チームでも、54人が空襲で命を落としています。

──異星人が人類を探したいと思えば、地図が必要になるはずです。探査機ボイジャー1号にはそのための地図が積まれているそうですね。

 当時のNASA(米航空宇宙局)は、太陽系の外を目指すボイジャー探査機に、地球についての情報を搭載したいと考えます。そこで天文学者のフランク・ドレイク氏とカール・セーガン氏に知的生命体に向けたメッセージの作成を依頼しました。フランク・ドレイク氏は地球外生命探査(SETI)にも関わっており、地球外の知的生命体と人類に共通するのは何か、彼らの世界観はどのようなものか、などについて長い間考えをめぐらせた末に、太陽系の位置を示す地図を作ろうと考えたのです。

 そのために、パルサーと呼ばれる天体を使うことにしました。パルサーは超新星爆発の残骸で、この当時に発見されたばかりでした。規則正しい周期で発光し、それぞれ独自の発光パターンをもつので、その光からパルサーを特定できるというわけです。ドレイク氏は、探査機を検知できる知的生命体であれば、パルサーを理解し、地図から太陽系を見出せると考えたのです。(参考記事:「鳴沢真也 正しい宇宙人の探し方~SETIの話」

ギャラリー:古今東西の個性的な地図 6点(画像クリックでギャラリーへ)
16世紀のイスタンブールを描いた独創的な地図。アヤソフィアなどの歴史的建造物が描かれている。(COURTESY OF ISTANBUL UNIVERSITY LIBRARY OF RARE BOOKS)

──私の息子は30代ですが、そのくらいの人はたいてい地図の読み方を知りません。グーグルマップに頼っています。人工衛星やGPSの時代にあって、地図は時代遅れのものになり、やがてはなくなってしまうのでしょうか。

 ははは。よくある質問ですが、個人的にはその可能性は低いと考えています。なぜなら、地図には道案内だけでなく、他にもたくさんの役割があるからです。iPhoneの画面やグーグルマップを見ても、貧困地域や地下の地質構造まではわかりません。

 本書には、19世紀のロンドンの貧困状況といった生活状態を表した地図や、世界の各民族の起源と考えられていた場所を示した世界初の民族誌地図なども掲載しています。また、科学分野で利用された地図もあれば、単にデータを美しく並べただけの地図もあります。息子さんのように、あまり地図を読んだことがない若い世代の方も、さまざまなストーリーや、地図の使い道に思いをはせて楽しんでいただけたらと思います。

文=SIMON WORRALL/訳=鈴木和博

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