謎の地震が世界を駆け巡る、20分超継続、原因不明

アフリカ東沖で11月に発生、ハワイにまで届くも誰も気づかず

2018.12.05
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楽器のようなもの

 結局、マヨット島でスローな揺れを起こしているのは何なのか? 海底火山の噴火がこうした低周波の震動を起こすことはあり得るが、今のところ、そうした証拠はない。

 現在の仮説は主に、地殻の移動かマグマ溜りの崩壊によって、マグマ溜りの中で何かが共振したのが原因ではないかというものだ。エクストローム氏によると、共振そのものは、溶岩の揺れやマグマに伝わる圧縮波など、リズムを持った動きであれば何でも該当し得る。地震波の特徴を調べれば、地中深くでうごめく溶融物質の大きさや形を推測できるかもしれない。

「楽器のようなものです」と、フランス、コート・ダジュール大学の地震学者、ジャン=ポール・アンプエロ氏は話す。「音が低かろうが、音程が外れていようが、楽器が生み出す音というのは、楽器のサイズに依存します」

 単純な波形の原因の一部は、周囲の岩石や堆積物かもしれない、とローマックス氏は付け加える。地質学的な特徴によって「雑音」が遮断されてしまい、17秒サイクルの単一の波形だけが届いている可能性があるというのだ。

 この地域の地質は非常に複雑であることから、この考えにはロビンソン氏も同意している。マヨット島は古い断層がいくつも交わった場所にある。その中には、超大陸ゴンドワナの南部が最後に分裂した時のものもある。さらに、ここの地殻は一種の移行過程にあり、分厚い大陸地殻と、薄い海洋地殻との中間的なものだ。こうした複雑さが、単純な波しか届かない原因かもしれない、とロビンソン氏は言う。(参考記事:「【解説】地球のプレート運動、14.5億年後に終了説」

ギャラリー:この世の果て? 地獄のような絶景写真12点(写真クリックでギャラリーページへ)
エチオピアのダロル火山。この世のものとは思えない光景が広がる。(PHOTOGRAPH BY CARSEN PETER, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

「すべて的外れかもしれません」

 だが、今のところはデータ不足で、波形についてそれ以上言うことは難しい。ヒックス氏の初期のモデルでは、震動はマグマの流出やマグマ溜りの天井の崩壊ではなく、地下でマグマ溜りが膨張したのが原因と示唆された。ところが、新たなデータを少し加えただけで、今度はマグマ溜りが収縮している可能性が高いという結果が出た。

 両方起こっていることもあり得る、とロビンソン氏は言う。「マグマ溜りが崩壊するとき、膨張と収縮が両方同時に起こることがあるんです」と同氏は説明する。また、地球が呼吸するかのように、マグマ溜りが膨張と収縮を繰り返すこともある。

「何が原因で、誰の説が正しいのか、明らかにするのはかなり困難です。今回の現象について私が話していることも、すべて的外れかもしれません」とロビンソン氏は語る。

 BRGMは今後、この地域についてより詳しい情報を取得し、海底火山噴火の可能性を探るため、海底調査を行う予定だ。それまでの間は、今あるデータでの推測が続くことになる。原因がごく普通のことなのか、特殊なことなのか、それはいまだにわからない。が、ローマック氏が言うには、科学の面白さは探究にこそある。

「どの分野で、どの時代かにもよりますが、99.9%の場合、普通のことだったり、ただのノイズだったり、間違いだったりするものです。そして、ほんの0.1%の場合において、何か特別なことが起こっているのです」。そう同氏は話す。「でも、そういうものなのです。そうでなければいけません。それが科学の進歩というものです」

文= Maya Wei-Haas/訳=桜木敬子

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