シマウマもコウモリもクマもする。クジラもトラもヒトもする。これらの動物はみな、生まれたばかりの子にミルクを与えて育てている。ミルクでの子育ては、哺乳類の定義にもなっている。
11月30日付けの学術誌「サイエンス」に掲載された論文によると、アジアの熱帯に広く生息しているクモも、子どもに母乳を与えることが明らかになった。Toxeus magnusというハエトリグモの1種が、自分の体から分泌される液体を子グモに与えていたのだ。中国科学院の保全生物学者の権鋭昌氏らがこの液体を調べたところ、糖質、脂質、そして牛乳の4倍近くのタンパク質が含まれていて、ミルクと呼んでもおかしくないものだった。(参考記事:「【動画】求愛ダンス踊るクモの新種が7種見つかる」)
おそらく最も意外なのは、子グモが性的に成熟した後もまだミルクを飲み続けていたことだ。カナダ、マクマスター大学の進化生態学者ジョナサン・プルーイット氏は、「娘が大人になるまで親が世話をしつづけるというのは、普通では考えられません。驚くべき発見です」と言う。
この行動の進化的な意味も、驚くべきものだった。
自分の体を食べさせる母親も
クモの授乳は意外に思われるかもしれないが、クモの子育てについてこれまでに知られていることを考えると、それほど不思議ではない。
クモは孤独な生き物という印象があるかもしれない。しかし、さまざまなクモが子の世話をしている。クモの社会的行動を研究するプルーイット氏は、「多くのメスのクモが卵を包む卵のうという袋を守っていて、その間は何も食べません」と言う。「背に子どもたちを乗せ、絵本に登場する魔法のスクールバスのように、あちこち連れていくクモもいます」
鳥のように先に消化しておいた食物を吐き出して子に与える母グモや、自分の体を溶かして子に食べさせる母グモさえいる。(参考記事:「【動画】母親を食べて育つクモ、養母も食べていた」)
しかし、ミルクのような液体を分泌して子に与えるクモが確認されたのは、これが初めてだ。(参考記事:「草食のクモを初めて確認」)
本当に「ミルク」なのか
「ミルクの定義を広くとらえて、子を養うための栄養分に富む物質のすべてをミルクと呼ぶなら、クモのミルクと考えてよいでしょう」と、米アイダホ大学の泌乳生理学者エイミー・スキビエル氏は言う。
「ミルクのような液体を分泌する哺乳類以外の動物を考えてみると、驚きは少し薄れるでしょう」とスキビエル氏。ハト、フラミンゴ、ペンギンなど一部の鳥は、上皮細胞に由来する素のう乳という物質を子に与える。また、ある種のゴキブリは卵を産まずに体内で子を育てるが、その際に一種のミルクを分泌することがわかっている。(参考記事:「ホホジロザメが子宮で「授乳」、サメでは初の発見」)
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