トランプ大統領、国立保護区を次々に縮小

米国西部の公有地をめぐって、全米で激論が戦わされている

2018.12.02
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2017年12月、ユタ州議事堂の前で抗議活動をする先住民の活動家。5000人のデモ参加者は、55万ヘクタールのベアーズ・イアーズ国立モニュメントを約85%縮小するというトランプ大統領の方針に抗議するために集まった。PHOTOGRAPH BY AARON HUEY

 米国西部の土地は、かつて政府が先住民から取り上げて以来、激論の的になってきた。

 米国が太平洋に向かって拡大していた19世紀、「誰のものでもない土地」を入植者や鉄道会社、鉱山会社に譲渡することは、国家建設に欠かせないと考えられていた。だが1870年代になって、中西部で森林の乱伐が進むと、天然資源の急速な枯渇によって米国はいずれ窮地に陥るのではないかとの不安が広がった。

 資源は有限だという新たな認識から、連邦政府が国益に沿って恒久的に管理する「公有地」という概念が生まれた。1872年、ユリシーズ・グラント大統領は法案に署名し、イエローストーンを世界初の国立公園に制定。1891年には森林保護区を制定する権限が大統領に与えられたが、反対する人々は「わが国の恥となる前代未聞のあしき制度」とあざ笑った。

西部11州のほぼ半分の面積が政府所有地

 こうした意見の対立は今も変わっていない。連邦政府は西部各地に2億3000万ヘクタールの公有地を所有している。ユタ州の63%、ネバダ州の80%をはじめ、西部11州の全面積の半分近くが連邦政府の所有地になっているのだ。こうした土地を保護し、管理する措置はいずれも激しい反対に遭ってきた。

 ユタ州の乾いた峡谷から、巨木がそびえる太平洋岸まで、米国西部の公有地をめぐって、全米で激論が戦わされている。なかでも、2016年12月に当時のバラク・オバマ大統領が制定したベアーズ・イアーズ国立モニュメントは激戦の現場といえる。

 2017年12月、ドナルド・トランプ大統領は約55万ヘクタールだった国立モニュメントの面積を約85%も縮小し、インディアン・クリーク地域とシャシュ・ジャア地域に分割して、それぞれを国立モニュメントにした。さらに大統領は、同じユタ州にあるグランド・ステアケース=エスカランテ国立モニュメントも約46%縮小。この決定に対して、合法性を問う訴訟が5件起こされたが、いずれも係争中で結論は出ていない。

 西部の土地をめぐる論争は、政争という面もある。トランプ大統領は、オバマ前大統領が進めた公有地政策を覆す政治的キャンペーンを展開。その一環として国立モニュメントを縮小し、保護されている土地や海域を鉱山会社や資源採掘企業に開放し、希少な生物の生息地保護を後退させようとしているのだ。

 反応は予測通りのものだった。資源採掘企業や鉱山会社、牧場主が、ハイキングや自転車ツーリング、登山の愛好家、環境保護活動家と対峙することとなった。それは、古い西部と新しい西部との対立であり、天然資源を採掘したり、活用して生計を立てたりする人たちと、観光で訪れたり、観光ビジネスに携わったりする人たちとの対立だ。さらに、ベアーズ・イアーズには先住民もいる。

※ナショナル ジオグラフィック12月号「米国西部は誰のもの?」では、米国西部の土地をめぐり論争が激化する現地の様子をレポートしています。

文=ハンナ・ノードハウス/ジャーナリスト

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