絶滅した動物をどうやってイラストに描くのか?

忠実に再現するための工夫と情熱、画像12点

2018.12.02
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 博物館向けの展覧会を企画する米ミネソタ州の企業「ブルー・ライノ・スタジオ」に所属する画家、ベス・ザイケン氏の場合、まずは対象となる種に関する最新の論文に目を通し、地質学的な年代、気候、その種の生態学的地位についての考察を行うという。(参考記事:「虹色の恐竜が見つかる、ハチドリ似の構造色」

「『形状は機能に従う』というのは美術に関する古い格言ですが、生物学においては、この言葉は非常に的を射ています。動物は、自分にとって必要なことをするためにデザインされているのです」

 しかし化石というものは、骨格全体が見つかることはほとんどない。種によっては、ほんの小さな欠片しか見つかっていないものもあるほどだ。「どこかが欠落していたり、歪んでいたりすることがほとんどです。ほぼ何もわかっていない状態であっても、画家はどのようにその欠落を埋め、体のプロポーションを修正するかを決めなければなりません」と、セレスキー氏は言う。

 体全体のプロポーションと重要な特徴が把握できたところで、次は骨格の周りに付く筋肉や軟組織を具体的に決めていく。徐々にその生物の形が見えてきたら、今度は外観に関する情報について考察する。例えば、化石には軟組織が残っているか、体の色はどうなっていたのか、角やとさかといった特徴的な構造物はあったかといったことだ。(参考記事:「ティラノサウルスはなぜ「うろこ肌」だったのか」

古生物イラストレーションにかける情熱

 続いて、古生物を描き込む風景を決めていく。ザイケン氏は、「見る人を、生物と一緒にその世界にいる瞬間に引き込むような」環境を描くことを目指しているという。「激しい動きのある、ハリウッド映画でよく見るような過剰にドラマチックな絵ばかり描くわけではありません」

 ザイケン氏は、研究に基づいた現実的な場所を描くのを好んでいる。「いかにも“日常のひととき”といった瞬間をとらえたいのです。動物たちがその生活の大半を費やしている瞬間です」。それは例えば、草を食んだり、狩りをしたり、身を隠したり、交尾をしたり、移動をしたり、子育てをしたりといった場面だと彼女は言う。

ギャラリー:イラストでよみがえった恐竜・古代生物 12点(画像クリックでギャラリーページへ)
最終氷期のニューヨーク
博物館のジオラマ用に描かれた太古の風景。米国の画家ベス・ザイキン氏はこのパノラマの中に、最終氷期に現在のニューヨークあたりにいた、マンモス、カリブー、ジャコウウシなどを描き入れた。(ILLUSTRATION BY BETH ZAIKEN)

 米フロリダ州のフリーランス・イラストレーター、ガブリエル・ウゲット氏もまた、絶滅した動物たちが日常的な行動をしている姿を描くのが好きだという。恐竜たちは「口を大きく開け、凶暴な目をした『血に飢えたモンスター』として描かれることが多すぎます」とウゲット氏は言う。「確かに血みどろになる瞬間もあるでしょうが、そうした場面は、ほかの行動ほど頻繁に見られるわけではありません」(参考記事:「ティラノサウルスから走って逃げることは可能、新研究」

 化石は現在も続々と発見されており、過去数十年間で古生物アート作品も爆発的に増加している。常に新しい題材には事欠かず、古生物学者の中にも、魅力的な絵は自分たちの研究を幅広く知ってもらうのに役立つことを理解している人が増えたと、セレスキー氏は言う。

 質の高い古生物アートの魅力はしかし、情報の豊かさや技術だけではなく、それを支える情熱にもあるのだろう。

「わたしの中身は、相当はオタクなんです。まだほんの小さな頃から、ベッドの下にしまった靴箱の中で、自分だけの昆虫コレクションを作っていました」とザイケン氏は言う。「過去10年間、博物館専属のアーティストとしてこなしてきた仕事のおかげで、かつてわたしが想像もしなかったほど魅力的な題材に取り組み、多くを学ぶ機会に恵まれました」

参考ギャラリー:奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点(写真クリックでギャラリーページへ)
約1億1000万年前、現在のカナダ西部に生息していたこの草食(植物食)恐竜は、氾濫した川にのみ込まれ、海まで流されて、堆積物に埋もれた。そのおかげで、装甲が細部まで美しく保存された。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC)

文=JOHN PICKRELL/訳=北村京子

おすすめ関連書籍

恐竜がいた地球

2億5000万年の旅にGO!

今からおよそ2億5000万年前から6500万年前、「進化の爆発」ともいえる時代の地球。恐竜はもちろん、海の生物や虫たちまで、この時代の生き物たちを迫力のビジュアルで紹介します。

定価:本体1,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加