このアリは菌類(タイワンアリタケ)に感染してゾンビ化すると、巣から出て林に誘導される。菌類はアリの体を破り出て、さらに仲間のアリに胞子をふりかけて「ゾンビ侵攻」を進める。 (Photograph by Anand Varma, Nat Geo Image Collection)
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――他の生物に入り込み、体を乗っ取る寄生虫はどうですか? どうやったらそんなことができるのか、また、彼らが出会う危険について教えてください。

 いわゆる寄生虫――蠕虫(ぜんちゅう)ですね。彼らは複雑な生活環を持っていて面白いです。たとえば、淡水にすむヨコエビという甲殻類に寄生する蠕虫は、ヨコエビの体内にとどまらず、最終的には魚か鳥の腹の中に移らないと生活環が完了しません。ここで、悪魔的に精密な操作術が発揮されます。寄生虫の種類で、鳥に入りたいのか魚に入りたいのかは違うのですが、それぞれの寄生虫がヨコエビに指令を出します。(参考記事:「宿主をゾンビ化して操る 戦慄の寄生虫5選」

 もう少し詳しく説明しましょう。鳥に移りたい寄生虫は、ヨコエビに入った後、水面近くにヨコエビを誘導します。これで鳥に食べられやすくなり、目的外の魚には食べられにくくなります。反対に魚に移りたい寄生虫は、ヨコエビを水底近くに誘導します。(参考記事:「2014年11月号 世にも恐ろしい心を操る寄生体」

 こんな風に、彼らは複雑な生活環を進化させています。実際、とても賢い生き方だと言えます。

――寄生虫やハチから少し離れて、映画に見られる、ポップカルチャーにおけるゾンビについて教えてください。

 ゾンビ映画には死者が蘇るだけでなく、ウイルスによって人が凶暴化する作品もありますね。このゾンビは、狂犬病の症状から発想されたようです。ウイルスは寄生生物とは認識されていないかもしれませんが、狂犬病ウイルスは、宿主をマインドコントロールしてしまう寄生ウイルスです。本来はヒトではなく、他の哺乳類をターゲットとして進化してきました。しかし、私たちヒトも哺乳類であり、アライグマやオポッサムなどと似た脳を持っていますから、感染してしまうのです。

 狂犬病を発症した人の映像がありますが、見るのはつらいものがあります。泡を吹くという症状がよく知られていますが、症状が出始めたときにはもう手遅れで、死は避けられません。発症前にワクチンを打てば、死を免れることができます。でも、症状が出始めてしまうと、生存率はほぼゼロです。(参考記事:「狂犬病から“ゾンビウイルス”?」

 ポップカルチャーで描かれるゾンビは、狂犬病を発症した人に似ています。でも、実際のウイルスの振る舞いはさらに複雑です。狂犬病ウイルスが生活環を完了させるアライグマでウイルスがやるのは、ほかの宿主に移るためウイルスだらけの唾液を泡として吹かせるだけではありません。宿主を操作して、より攻撃的な行動に振り向けます。宿主が他の動物に噛みつけば、ウイルスは新しい体に入り込めますから。

 まだあります。ウイルスは宿主に水を避けさせるだけでなく、水を怖がらせます。おそらく、ウイルスを口から洗い流してしまわないよう、操作するのでしょう。そうした状態にある人の映像も見たことがありますが、看護師に水を差し出されるだけで、恐怖で後ずさりしていました。ウイルスは、宿主が水を目にしただけでひるむような操作までするのです。狂犬病は恐ろしい病気ですが、私たちがよく知るゾンビ映画に影響を与えたことは確かでしょうね。

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