世界は「ゾンビ」だらけ、寄生されれば人間も…

ヒトさえ凶暴なゾンビに変える寄生体、ヒトに危険なものはウイルス

2018.11.28
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とげとげした頭の寄生虫の幼虫に侵されたヨコエビは、寄生虫の生存のための奴隷と化してしまう。(Photograph by Anand Varma, Nat Geo Image Collection)
とげとげした頭の寄生虫の幼虫に侵されたヨコエビは、寄生虫の生存のための奴隷と化してしまう。(Photograph by Anand Varma, Nat Geo Image Collection)
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――ここまでは、寄生の恐ろしい結末について伺いました。ところで、北米のスペリオル湖にある、米ミシガン州のアイル・ロイヤル島では、エキノコックスという寄生虫がオオカミたちの食事を助けることでオオカミに寄生するとききました。どういうことか教えていただけますか。

 エキノコックスの行動の操作は、とても面白いものです。エキノコックスは、脳を直接操るのではないのです。エキノコックスがヘラジカの体内に入ると、肺に移動して、ゴルフボールほどもある、大きな嚢腫をつくります。これでヘラジカは、呼吸が困難になります。

 この島のオオカミとヘラジカは、言わば一緒に島に閉じ込められているようなもので、生態系の中で互いに大きく影響し合っています。エキノコックスに感染したヘラジカは、動きが遅くなり、衰弱して身を守ることが難しくなります。結果的に、オオカミに捕食されやすくなり、エキノコックスはオオカミに移ります。巧みなものですね。(参考記事:「【動画】かわいいヘラジカの三つ子が家に来た!」

――ダーウィンは1860年に「慈悲深く全能である神が、ヒメバチ(寄生バチ)を創造されたとは、私にはどうしても思われない」と記しています。あなたの本を読んでから、私も同じ思いになっています。ゾンビだらけの世界に神の居場所はあるのでしょうか? そして寄生体の存在は、私たちに何を示唆しているのでしょうか?

 アハハ[笑い声]。私は元々無神論者ですが、この本を書いたことで、ますますそう思うようになりました。寄生生物による操作は、宿主にとってあまりにも恐ろしく、痛ましいものばかりです。このことは、種に対するこれまでの見方を変えなくてはならないことを意味していると思います。(参考記事:「仏教の教えに通じるダーウィンの共感論」

 寄生生物がどのくらい自然界に広く分布しているのか、まだ解明できていません。私たちヒトも、例外とは言えません。私たちは、どれくらい自分で自分の脳をコントロールしているのでしょう? あるいは、望まずしてですが、寄生生物たちに操られている可能性もないとは言えませんよ。

(マット・サイモン氏へのインタビューをもとに構成)

文= Simon Worrall/訳=桜木敬子

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