【ギャラリー】「インド洋のガラパゴス」ソコトラ島 写真16点(写真クリックでギャラリーページへ)
ソコトラ島の子どもたちが、隕石によってできたと言われる池で遊ぶ。(PHOTOGRAPH BY MARTIN EDSTROM, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 一つ朗報と言えるのは、イエメンで激しい内戦が起きているにもかかわらず、いまのところソコトラ島には波及していないことだ。2015年初めより、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が主導する連合軍は、イエメンのアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領を支持し、イランの支援を受けたフーシ派を撲滅すべく、イエメン本土を攻撃している。戦闘状態にあるイエメン政府には、2015年のサイクロンが襲来しても、ソコトラ島を支援することができなかった。そこでUAEを筆頭とする湾岸諸国が支援を行ったが、イエメン政府に代わって島に対する影響力を高めようとしているとの非難を受けることになった。(参考記事:「混迷するイエメン」

 2018年、 島を巡ってUAEとイエメン政府が緊張状態に発展し、島の中心都市ハディボで大規模な抗議活動が起きた。最終的にサウジアラビアが調停役を務めることになったが、現状は流動的で、島には3カ国の軍隊が駐留しているようだ。もちろん、環境保護のためではない。

成長と環境保護の板挟み

 ソコトラ島の人口は6万人ほどと言われ、その4分の1はハディボで暮らしている。ハディボは、島の北側の海岸線に沿って広がる町で、海とハギエル山地の絶壁の間に位置している。

 ソコトラ島の環境保護および開発担当副知事であるアブダルガミル・モハメド氏は、舗装道路と空港の建設がここ数十年間の進展だと言う。しかし、歯止めのない都市開発もまた脅威だ。アブダルガミル氏は、慎重に成長を取り締まることも必要だと話す。人口増加や過放牧、政情不安など、同氏の心配は尽きない。

「私たちの自然遺産はほかにはないものです。そして、私たちがソコトラ島に対して行っていることは、地球の保全にも役立っています」とアブダルガミル氏は言う。地元の専門家たちは、数十年間にわたって国際研究チームと連携しているが、最近では、島にたどり着くことさえ簡単ではなくなっている。取材班も、木造の貨物船に乗って何日も海上で過ごさなければならなかった。このあたりは、ソマリアの海賊が横行している危険な海域だ。

 ソコトラ島の空港は稼働しているが、利用できるわずかな航空便は、アルカイダの活動によって危険が増しているイエメン本土を経由するものか、許可された者だけが利用できるUAEからの便しかない。2013年には毎年3000人が訪れるまでに成長していた観光業は、イエメンの内戦が勃発して以来、休止状態だ。島の治安が安定すれば、管理が行き届いた地域密着型のエコツーリズムによって、経済は大いに活性化するだろう。しかし、拡大の方法を誤れば、環境は取り返しのつかない被害を受けることになる。

 リュウケツジュが作る豊かな日陰は、貴重な水が蒸発するのを防ぎ、そのおかげで木の根元まで水分がしみわたる。それと同じように、ソコトラ島の人々もこの土地に適応している。「洞窟人アブドラ」は、最初のうちは観光客を驚かせるためだけに洞窟に戻ってきたのだと打ち明ける。しかし、やがて洞窟が気に入っていることに気づき、観光客が消えてからも立ち寄るようになった。古代と現代の調和を楽しんでいるという。

 島全体が、適度な調和を見つけるために苦悩している。ソコトラ島は、自然環境的にも、地政的にも、気候変動の最前線にいる。部外者が権利を主張する事態にもなっている。古い船乗りたちが残したのは、岩壁の文字だけだった。現代の訪問者たちは、果たしてこの島にどんな遺産を残していくのだろうか。

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文=LEON MCCARRON/写真=MARTIN EDSTRÖM/訳=鈴木和博