インドネシア東部の海岸に打ち上げられたマッコウクジラの死骸から、115個のカップ、25枚のビニール袋、複数のペットボトル、2個のサンダル、1000本を超えるひもが入った袋など、恐ろしいほど大量のプラスチックごみが出てきた。
胃の中に残されていたプラスチックごみの重量は約6キロもあった。
体長9.5メートルのこのクジラは、11月19日、ワカトビ国立公園内にあるカポタ島の浅瀬で、すでに死んで腐敗しつつある状態で見つかった。世界自然保護基金(WWF)インドネシア支部の海洋保護コーディネーター、ドゥウィ・スプラティ氏はAP通信の取材に対し、「死因は推測できませんが、私たちは本当に恐ろしい事実を目の当たりにしています」と語った。
マッコウクジラの主食はイカ。ほかにもタコや魚、エビ、カニ、小型のサメなどを食べる。世界中の海に生息するが、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは危急種(Vulnerable)に指定されている。
今回クジラが打ち上げられたインドネシアは、人口2億6300万人、5万4716キロもの海岸線をもつ。2015年には、プラスチックごみによる海洋汚染のランキングで、中国に次ぐワースト2となった。192の沿岸国が対象となったこの調査では、毎年合わせて850万トンのプラスチックごみが海に流れ込んでいると報告されている。(参考記事:「プラスチックごみ問題、アジアの責任は?」)
中国は2018年に入り、国外で排出されたプラスチックごみの輸入を禁止。全世界のリサイクル産業に混乱が起き、プラスチックごみの行き先が東南アジアへとシフトした。(参考記事:「「世界の廃プラ処理場」は中国から東南アジアへ」)
インドネシア海洋担当調整大臣のルフット・ビンサル・パンジャイタン氏はAP通信の取材に対し、今回の出来事をきっかけに、プラスチックごみに対する人々の意識が高まり、プラスチックの使用を控える動きにつながることを願うと述べている。パンジャイタン氏によれば、インドネシア政府は現在、2025年までにプラスチックの使用を70%削減するという目標を掲げている。また、ビニール袋の提供をやめるよう小売店に要請しており、学校でプラスチックごみの問題を取り上げる教育プログラムも始動したという。
パンジャイタン氏は英「Guardian」紙に対し、「このニュースを聞いて、心を痛めています。多くの海洋生物がプラスチックごみで汚染されている可能性があり、これは私たちの暮らしを脅かす非常に危険な事態でもあります」と語っている。(参考記事:「人体にマイクロプラスチック、初の報告」)
大量のプラスチックをのみ込んだクジラが打ち上げられたのは、この数カ月で2度目だ。6月には、マレーシアと国境を接するタイ南部のソンクラー県で、衰弱したゴンドウクジラが発見されている。救助チームが5日間にわたって回復を試みたが、失敗に終わった。このクジラは死の直前、5枚のビニール袋を吐き出した。解剖の結果、80枚のビニール袋を含む8キロ分のプラスチックごみが胃の中から出てきた。(参考記事:「【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚」)