【動画】なぜセックスは隠れてするのか、鳥で研究

ヒト以外で唯一、優位のカップルも性行為を隠すアラビアヤブチメドリ

2018.11.26
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「重要なのは刺激を隠すこと」

 アラビアヤブチメドリと同様、人間も共同繁殖を行う。マックス・プランク進化人類学研究所の一員でもあるベン・モカ氏は、アラビアヤブチメドリの交尾は人間に通じる部分があると述べる。(参考記事:「オランウータンと「少子化」と「孤独な子育て」」

 伝統的な文化ではほぼ例外なく、親密な時間は他者から隠される。人前でセックスすることがあるとしたら、通常は儀式的な意味を持つ場合のみだ。

 重要な点は、人間とおそらくアラビアヤブチメドリの両者とも、セックスしているという事実は隠しておらず、ただ行為そのものを隠しているだけだ、とベン・モカ氏は強調する。

「重要なのは刺激を隠すことで、それが存在するという事実を隠しているわけではありません」

 人間もアラビアヤブチメドリもその理由は同じで、パートナーとの独占的な関係を守りながら、グループ内の協力関係を維持するためだとベン・モカ氏は考えている。そのためには、他者の交尾を見るという視覚的な刺激がない方がはるかに簡単だとベン・モカ氏。

「協力関係を維持しながら、パートナーとの独占的な関係を守る助けになります」

 一方で、視覚刺激は社会的な対立を招き、グループの協力関係を壊す恐れがある。

ほかの鳥たちも?

 ベン・モカ氏によれば、フロリダカケスなど、最上位のオスとメスが交尾を隠す鳥はほかにも存在する可能性があるという。しかし、現在のところ、動物のこうした行動を記した論文はほかに発表されていない。(参考記事:「スズメはなぜ町の中でしか子育てしないのか?」

 米コーネル大学鳥類学研究所の客員上級研究者ウォルト・ケーニグ氏は、この興味深いテーマを論文にまとめる人がついに現れたと喜んでいる。

アラビアヤブチメドリの群れが支配的なオスとメスの密会に気づいている可能性はあるが、実際に交尾を目撃することはほとんどない。このカップルは下位のメンバーたちに性行為を見られないよう、わざわざ茂みの陰に身を隠している。(PHOTOGRAPH BY YITZCHAK BEN MOCHA)
[画像のクリックで拡大表示]

 ケーニグ氏によれば、ドングリキツツキも交尾を隠すという。ケーニグ氏は約40年にわたってこの鳥を研究してきたが、交尾する姿を見た記憶がない。ドングリキツツキも協力しながら子育てをする共同繁殖者であり、メスが本当の父親を隠すために交尾も隠しているのではないかと、ケーニグ氏は推測している。(参考記事:「キツツキはなぜ頭が痛くならないのか」

 ベン・モカ氏はこの説に反対の立場をとっている。メスが下位のオスと交尾するのは産卵後に限られ、父親がわからなくなる心配はないためだ。

 ただし、下位のオスとこっそり交尾し、視覚的な刺激を隠すことは、群れの協力関係の維持に役立つと、ベン・モカ氏は話している。最上位のオスに密会を知られなければ、下位のオスが群れを追い出されることはない。

 いずれにせよ、1つだけ確かなことがある。鳥たちの社会にも秘め事は存在する、ということだ。

【参考ギャラリー】世界の美しい鳥たち2(写真クリックでギャラリーページへ)
野生のコザクラインコ Erongo, Namibia(Photograph By Alexandra Timsit, National Geographic Your Shot)

文=JOSHUA RAPP LEARN/訳=米井香織

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