最悪の山火事は、いかにカリフォルニアを襲ったか

「地獄の門が開かれた」、カリフォルニアが直面する破壊の序章にすぎない

2018.11.15
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【ギャラリー】カリフォルニア州史上最悪の山火事 写真18点(写真クリックでギャラリーページへ)
山火事「ウールジー・ファイア」の消火活動に従事する消防士。12日、カリフォルニア州マリブで撮影。(PHOTOGRAPH BY ERIC THAYER, REUTERS)

 シューメーカー氏によれば、カリフォルニア州は秋から冬にかけて、このような強風によく見舞われるという。まず、ネバダ州とユタ州上空の冷たい高気圧から西海岸上空の暖かい低気圧に空気が流れ、風が生じる。この風がカリフォルニア州を縦断する山の小さな隙間を抜け、まるで細い川を流れる水のように、険しい峡谷を吹き下ろす。この過程で、風は高温になり、乾燥していく。

破壊された"パラダイス"

 パラダイスの町では、複数の住民が屋根に降り注ぐ火花の音で目を覚ました。住民たちは車に乗り込み、避難を試みたが、炎と煙に視界を遮られ、ほかの車と衝突する人や土手に乗り上げる人が続出した。生存者たちは「地獄の門が開かれた」、「目の前に黒と赤の世界が広がっていた」など、聖書のような言葉で恐怖を表現している。

 スコット・マクリーン氏は午前8時ごろ、パラダイスに到着した。炎はすでに町の南側をのみ込んでいた。マクリーン氏はカリフォルニア州森林保護防火局で21年働くベテラン消防士で、2014年から広報主任を務めている。それでも、マクリーン氏は目の前の光景に驚いた。そして11日、その光景を「地獄」という一言で表現した。

 道路は大破した車や乗り捨てられた車でふさがれていたと、マクリーン氏は振り返る。辺り一面が炎、煙、がれきだった。マクリーン氏は時間をはっきり覚えていないと前置きした上で、午前9時ごろ、空が煙に覆われ、夜のように暗くなったと話している。安全な避難ルートを探すため、車を走らせていたとき、マクリーン氏は誰もいない道路で1人の高齢女性に出会った。女性は車椅子に乗り、混乱の中を懸命に進んでいたという。

 消防隊はしばらく人命救助のみを行った。強風の中、炎はあちこちに燃え広がり、封じ込める手だてがなかったためだ。

2つの前線での戦い

 南カリフォルニアでは9月下旬に吹く風とともに、山火事の季節が始まる。通常、北カリフォルニアではそれまでに雨や雪が降り始め、消防隊を南に派遣できるようになる。しかし、ここでも2018年は異変が起きていた。

 8日午後2時、パラダイスとその周囲でキャンプ・ファイアが荒れ狂っていたとき、ロサンゼルスの北西約65キロの地点で、2つの山火事が発生した。南カリフォルニアではサンタアナと呼ばれる乾いた熱風にあおられ、山火事は拡大していった。

 ヒル・ファイアが発生したのは、サウザンドオークスから北西に数キロのサンタ・ローザ・バレー。その約22.5キロ東、サンタスザーナ野外実験所の跡地に隣接する丘で、ウールジー・ファイアが発生した。サンタスザーナ野外実験所はベンチュラ郡にあった研究施設。数十年にわたってロケットや原子炉の実験が行われ、1959年には、燃料棒の部分的な溶融が起きている。

 当初、ヒル・ファイアの方が深刻な状況で、短時間で約360平方キロに燃え広がった。しかし、100平方キロ近い被害を出した2013年の大火災と同じ場所に入ったため、燃えるものが激減し、勢いがなくなった。そして、ウールジー・ファイアが主役の座を奪う。炎は無限に広がる郊外を南進し、数カ所で国道101号線を飛び越えた。

 そして、なすすべもなく、マリブをのみ込み始めた。

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