ユネスコ世界遺産に登録されたデロス島の、クレオパトラとディオスクリデスの家に立つ彫刻。遺物の豊富さにおいて、デロス島はキクラデス諸島の中で一番だ。(Photograph by Angelo Cavalli, Robert Harding/Nat Geo Image Collection)
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 デスポティコ島は今でも、考古学的な宝の豊富さという意味で聖地と言えるかもしれない。2010年にデスポティコ島でビザンチン帝国のコインが見つかってからというもの、周辺から既に6000点を超す古代の遺物やその断片が発掘されている。

 デスポティコ島の発掘を指揮した考古学者ヤノス・クレヨス博士は、彫像の破片85点と「アポロン」の名が刻まれた陶片200点以上を掘り出した。さらに深く掘り進むと、パロス島の大理石を使った高さ4メートル弱の柱7本が現れた。これは、キクラデス諸島の各地に建てられた22のアポロン神殿の1つで、デスポティコ島で最大の発見となったのだ。(参考記事:「哲学者プラトンが元凶、世界が夢見たアトランティス」

 古代のパロス島の人々は、紀元前6世紀中頃にデロス島にあるアポロン神の聖地を支配した後、デスポティコ島に自分たちの聖地を建設した。その規模はデロス島のものを上回っていた可能性すらあるとクレヨス氏は考えている。「パロス島は当時大変な勢力を誇っており、都市から遠く離れた場所にこのような聖地を造る財力もありました」と説明する。パロス島の人々は「エーゲ海を支配しようという野心を持っていたのです」

 現在、発掘チームは、デスポティコ島の聖地再建という大きなプロジェクトに取り組んでいる。パロス島の大理石の採掘は禁止されているため、同じキクラデス諸島のナクソス島で切り出した大理石の平板をフェリーで島に運び込んでいる。

「パロス島の深さ120メートルもある大理石採石場は、考古学的な遺跡であり、記念碑とも言えます。芸術作品と言ってもいいでしょう」とクレヨス氏は言う。ギリシャの人たちにとっては、パロス島の大理石で建てられたアテナイのアクロポリスも、パロス島の採石場も国の宝なのだ。(参考記事:「2016年7月号 古代ギリシャ 満天の神々」

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