最古の動物壁画を発見、約4万年前、インドネシア

野生牛が3頭とおびただしい数の手形、ネイチャー誌

2018.11.13
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動物の絵から人間の世界の表現へ

 島の住民たちは、昔からこの洞窟画の存在を知っていた。高級食材として知られるツバメの巣を探しているときに、この驚くべき作品群を見つけていたからだ。1990年代には、ついに壁画が論文に記録されはじめ、やがて年代が特定されるようになった。だが、集めた多くのサンプルは多孔質で、それらは実際より古い年代が出てしまいがちな厄介者だったとオーベール氏は説明する。そのため当時は、作品の年代を1万年以上前と慎重に見積もっていた。

 しかし、オーベール氏のグループは、2016年と2017年に洞窟の再調査を行い、多孔質でないサンプルを新たに収集。洞窟内に存在する水を利用する手法を用いて、再度年代測定を行った。

 やり方はこうだ。頭上の岩や堆積物にしみ込んだ水には、石灰岩(炭酸カルシウム)と天然の放射性元素であるウランが溶けている。その水はやがて洞窟に染み出して、壁を伝うときに、ふたたび炭酸カルシウムの層ができながら少しずつ沈着していく。

 ウランには徐々に崩壊してトリウムになる性質がある。だが、トリウムは水に溶けにくいため、洞窟の壁にできる炭酸カルシウムに含まれるのはほぼウランだけになる。ウランがトリウムに崩壊する速度は決まっているため、ウランとトリウムの比率を計測すれば、さまざまな箇所の年代を特定することができるという仕組みだ。

暗い赤紫色の手形模様。最終氷期最盛期に描かれた。(PHOTOGRAPH BY KINEZ RIZA)
暗い赤紫色の手形模様。最終氷期最盛期に描かれた。(PHOTOGRAPH BY KINEZ RIZA)
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 オーベール氏のグループは、6カ所から15個のサンプルを集め、分析した。絵の表面を覆う(年代が新しい)炭酸カルシウムの層と、絵の下にある(年代が古い)層を一緒に切り出すのだ。

 年代測定の結果、旧石器時代のこの一帯の洞窟壁画は、時代的に3つの段階に分けられそうだということがわかった。さらに、その内容も、動物を描いたものから、人間の世界を表現したものに変わっていったようだ。

「これは想像していなかったことでした」とオーベール氏は言う。

 もっとも古い段階は、5万2000年前から4万年前の間に始まったもので、手形やウシのような動物が赤橙色で描かれている。その次の時代にあたるのは、暗い紫色の絵で、2万年ほど前のものだ。この段階の絵はたくさんの手形で構成されているが、タトゥーのような点や線で飾られ、しかも手と手がブドウのつる状のものでつながっている。オーベール氏によると、赤色と紫色の顔料は同じ材料に由来すると考えられ、古いほうがより赤く見えている可能性があるという。

 暗い赤紫色で描かれた細い人間の姿は、約1万3600年前の第3段階のものだ。この時代の絵のほとんどが、黒っぽく描かれた幾何学的図形や、踊ったり舟を漕いだり狩りをしたりなど、さまざまな活動に従事する棒人間だ。このような黒い絵は、ボルネオ島のさまざまな場所で見つかっているが、それらはほんの数千年前のものだと考えられている。

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