南極のウミグモにくっつく生物、どれだけ重荷?

「ヒッチハイカー」がウミグモの生活に及ぼす影響を解明

2018.11.12
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 彼らはウミグモのビデオも撮影し、生物が付着したウミグモの割合や、付着生物がいるウミグモといないウミグモに強い光を当てたときにどのくらいのスピードで逃げてゆくかを調べた(ウミグモが光を避けるのは、捕食者に見つけられないためと考えられている)。

 研究室に戻った科学者たちは、酸素センサーを使い、付着生物を透過してウミグモの外骨格表面に届く酸素の量を測定した。続いて、ウミグモの脚の中に酸素センサーを設置して、体内にどのくらい多くの酸素が拡散しているかを調べた。

ギャラリー:南極の氷の下、水深70mの海で驚異の光景を見た 写真12点(写真クリックでギャラリーページへ)
南極の冷たい海の下には、多様な海生無脊椎動物も生息している。(PHOTOGRAPH BY LAURENT BALLESTA)

 ウミグモに付着した蔓脚類によって生じる抵抗の大きさを調べるため、水槽に生きたウミグモを落とし、その落下速度を記録した。次に、付着生物を除去し、再び水槽に落として落下速度を記録した。

 蔓脚類が付着したウミグモは移動が制限されるため、水流が弱く、餌や繁殖相手が見つかりにくい場所にしかいないかもしれないと、今回の研究は示唆している。このことが南極の生態系に及ぼす影響はまだわからない。

「ウミグモが生態系に重要な役割を担っているのは確かだと思うのですが、私たちは彼らのことをあまりよく知りません」とレーン氏は言う。

南極が温暖化したらどうなる?

 ごくまれに魚やカニがウミグモを食べることがあり、野外調査でも、ウミグモを捕まえている魚が見られたが、これらの捕食者はすぐにウミグモを離してしまった。

 また、オスのウミグモはメスより襲われやすかった。オスのウミグモは特殊な付属肢を使って卵を運んでいるが、ある種のエビは、オスのウミグモを捕まえてひっくり返し、その卵を食べていた。卵を食べられたオスは解放された。

 ウミグモについてはまだわからないことが多い。特に南極のウミグモについてはわからないことだらけで、人間が及ぼす影響も不明である。

【参考動画】見事な動きで泳ぐウミシダ
参考記事はこちら「【動画】ウミシダ、温暖化する未来の海の王者に」(解説は英語です)

 南極や北極はほかの場所より温暖化や酸性化のペースが速いため、そこにすむ生物は大きな影響を受ける可能性がある。例えば、藻類やコケムシの成長速度が水温とともに上昇して、ヒッチハイカーの密度が高くなる可能性がある。(参考記事:「南極に出現した真四角な氷山、どうやってできた?」

「ウミグモは大昔から生息していました」とレーン氏は言う。最古の化石は4億年以上前のものだ。「南極のウミグモは寒冷な環境で長年暮らしてきたため、気候変動の影響を最初に受けることになるでしょう。海が温暖化したら、彼らが行く場所はありませんから」

文=Megan Chen/訳=三枝小夜子

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