【動画】ドローン撮影の功罪 野生動物への影響懸念

ヒグマ親子を撮ったドローン動画がネットで炎上。何が問題だったのか?

2018.11.12
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ロシアでドローンを使って撮影されたヒグマの母子の動画は世界中で閲覧されたが、こうした撮影法をめぐっては論争が起きている。(PHOTOGRAPH BY ROY TOFT, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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「母グマには、ドローンが何の目的で近くにいるのかなど、まったく分かりません。ドローンを見るのも初めてでしょうから、幼い子グマを連れている彼女にとっては、ドローンはむしろ危険な存在に見えたと思います」

 もう一度映像を冒頭から見てみよう。そもそもクマの親子が、わざわざ危険な斜面を選んで歩いていたことが、ドローンの存在(と、それから逃げたいという気持ち)がなければ説明しにくい。というのも、子グマを連れた母グマは、よほどのことがないかぎり、進んで難しいルートは選ばないからだ。

 ドローンが野生動物に「ハラスメント」をしていると思える動画は、ほかにもたくさん投稿されている。

 ギルバート氏はドローンが動物の行動に影響を与えた動画の例として、サケを食べているヒグマの映像、ムースを襲うオオカミの上空でドローンをホバリングさせて撮影した動画、低空飛行するドローンから逃れようとして走るエダヅノレイヨウの映像などを挙げた。

想像以上に騒々しい飛行音

 ギルバート氏は2016年に、研究でドローンを評価している。「飛んでいるドローンを近くから見たことがある人でないと分からないと思いますが、ドローンの飛行音は本当に大きいのです」と言う。動画はたいていサウンドトラック付きで投稿されており、騒々しくは見えない。しかし「実際の音ではありません」と、ギルバート氏は指摘する。

 ドローンの音だけでも、野生動物に与える影響は大きい。音を聞いた動物たちは、食べたり異性をめぐる争いを中断するだろう。影響がないように見える動物もいるが、大きな反応を示す動物もいれば、天敵を前にしたときのように警戒を強める動物もいる。

 仮に動物がドローンに無反応だとしても、実際にどう感じているのかは、外からは分からないこともある。ディトマー氏が2015年に行った研究では、アメリカクロクマは、ドローンが自分の上空を飛行しても逃げたり特別な反応を示したりしないものの、心拍数は急激に上昇することが判明している。 (参考記事:「ドローンはストレス源? 動物保護に課題」

「ストレス反応です」とディトマー氏は説明する。「一番ひどい例では、ドローンを飛ばす前には1分間に41回だったクマの心拍数は、ドローンが上空に来たときに162まで増加しました」

 もちろん、クマに限らず、動物にとって心拍数が急激に上昇することは野生では日常的に起こる。野生動物は、餌を探したり天敵から逃げたりするストレスが基本的にあることを忘れてはならない、とディトマー氏は言う。 (参考記事:「イッカクの牙は感覚器?」

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