コーヒーを飲むと不眠や不安になるのはなぜ?

興奮状態や不眠、不安への影響、苦味の感受性が異なるわけ

2018.11.08
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 アデノシン受容体の発現は、ADORA2Aと呼ばれる遺伝子によって制御されている。この多様性が、体がカフェインにどう反応するかに影響していることを示す研究が多くある。一日の早い時間にたったひと口コーヒーを飲んだだけで眠れなくなる人がいるのは、これが一因ともいわれている。また、不安症との関連を調べた2008年の研究では、一日150ミリグラム、レギュラーコーヒーなら2~3杯分のカフェインで、特定の遺伝子型の人々に破壊的な不安症を引き起こすことが分かっている。別の研究でも、アデノシン受容体遺伝子の変異とパニック障害の関連性が示唆されている。(参考記事:「健やかな睡眠のための12の指針」

 カフェインが好ましくない副作用と関連付けられているというだけで、コーヒーを避ける人がいるのも頷ける。薬理学専門誌「Pharmacological Reviews」の2018年4月号に論文を発表した、フランス国立保健医学研究所のカフェイン研究者アストリッド・ネリーグ氏は「カフェインの摂取量は、国によって、また個人によって大きく異なります。一部の人がカフェイン摂取後に不安症や頻脈、神経過敏といった副作用を経験しているという事実が、この違いに関係しているのかもしれません」と書いている。

 他にも、ドーパミン受容体遺伝子DRD2の多様性もコーヒーの好き嫌いに影響を与えるとされる。さらにABCG2という遺伝子は、脳の中枢神経系へ到達するカフェインの量を制御している可能性があると、コーネリウス氏は報告している。

飲めば飲むほど苦く感じる

 カフェインだけでなく、特にコーヒーはその味と香りで好き嫌いがはっきりと分かれる飲み物だが、これにも遺伝子が関係している。

 米ペンシルべニア州フィラデルフィアにあるモネル・センターで味とにおいの研究をしているダニエル・リード氏は、コーヒーを飲む人を対象に、苦みの感じ方に関係するとされている遺伝子の状況を調べてみた。被験者に純粋な液体カフェインを味見させたところ、コーヒーの毎日の摂取量が多い人の方が少ない人よりも「苦みが強い」と回答した。

 それぞれの回答者の苦味受容体遺伝子を調べてみると、コーヒーをたくさん飲む人の方がこの遺伝子が活発であることがわかった。しかし、カフェインの苦みを感じる遺伝子型がまったくない被験者もいた。ということは、こちらの人々の方がもっとコーヒー好きになるのではないだろうか。

「カフェインは、コーヒーの苦み成分のほんの15%にすぎません。残りの85%の苦みは、まったく別の化合物によるものです」と、リード氏は説明する。「苦味受容体には様々な種類がありますが、コーヒーに含まれる苦み成分にも様々な種類があります。コーヒーによっても違いますから、コーヒーの種類ごとに遺伝子を調べる必要があります」

 リード氏によると、カフェインは感覚の伝導路にも影響すると考えられているが、詳しいことはまだわかっていない。カフェインの化合物は受容体細胞の表面に結びつくばかりでなく、細胞のなかにも入り込むが、その影響がどこまで続くかも定かでない。

「苦みにとても敏感で、コーヒーの苦みを人よりも強く感じるとしても、コーヒーが好きということもあります。コーヒー豆の製造法によっては飲めるようになったり、カフェインの薬理効果を期待して飲むという人もいるかもしれません。あるいは苦い食べものが好きという嗜好の持ち主もいるでしょう」(参考記事:「味覚の科学 「おいしい」と感じるのはなぜ?」

【参考ギャラリー】動物たちの寝顔にホッとする 写真24点(写真クリックでギャラリーページへ)
巣穴で眠るホッキョクギツネ。(Photograph by Ashley Falls, National Geographic Your Shot)

文=Michelle Z. Donahue/訳=ルーバー荒井ハンナ

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