古代マヤ文明の都市カラクムルから見つかった絵。カカオ飲料を作って飲む様子が描かれている。(PHOTOGRAPH BY KENNETH GARRET, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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「(カカオの)さまざまなグループを全て比較すると、栽培化が起こったことと矛盾しない、大きな遺伝的分化を示すのは、クリオロだけです」。論文の筆頭著者で、米ワシントン州立大学の集団遺伝学者であるオマル・コルネホ氏はこう語る。

 コルネホ氏によれば、初期のカカオ栽培はクラライと呼ばれる古い近縁種からクリオロを育てたと考えられるという。これを何世代にもわたって改良するうち、風味が変わり、テオブロミン(チョコレートに苦みと刺激性を与える化合物)の含有量が増えていった。同時に病気に弱くなっていき、希少性が高まり続けることになった。

 コルネホ氏は、カカオの栽培はおよそ2400年前から1万3000年前のどこかの時点で起こった可能性があり、「最も有力なシナリオ」は約3600年前だろうと話す。意外なことに、クリオロが初めて栽培化されたのは、従来考えられてきた中米ではなく南米(現在のエクアドル)だということも判明した。

アマゾン盆地の太古の人々がカカオを加工し、味わっていた証拠が見つかった。従来の推定よりおよそ1500年早いことになる。(PHOTOGRAPH BY GABBY SALAZAR, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 しかし、どのようにしてカカオがアマゾン盆地からメソアメリカにたどり着いたのだろうか。このほど科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション」に掲載された別の研究成果が、1つの可能性を示している。論文を著した考古学者たちは、石と陶器のかけらから、アメリカ大陸でカカオが使用された最古の例を発見した。

 場所はエクアドルにあるマヨチンチペ文明の遺跡で、メソアメリカから出た証拠よりおよそ1500年古い、約5300年前のものだった。マヨチンチペは太平洋岸の集団と接触があったため、この人々を通じた交易で、カカオが北のメソアメリカに運ばれた可能性がある。

 カカオは「評判となり、現在のコロンビアでカカオを栽培した農家によって北へ広がり、やがてパナマなどの中央アメリカ、そしてメキシコ南部へ伝わっていったと考えられます」。論文の共著者であるマイケル・ブレーク氏はプレスリリースでこう語っている。チョコレートの起源が新しく書き換えられた今、チョコレートが大昔にいつ、どのように使われたのかをもっと知りたい人々にとっては、新たな“甘い”扉が開かれたと言えるだろう。

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