実は肉食も!?“草食恐竜”パキケファロサウルス

定説覆す新しい歯の化石に研究者ら驚愕、最新報告

2018.10.28
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 恐竜の食事の好みまで確認するには、彼らが食べていたものについて、もっと具体的な証拠が必要だ。科学者がそれを知る方法はいくつかある。1つは、パキケファロサウルスの歯のエナメル質中の炭素同位体比の分析だ。その化学的な特徴に加えて、歯の表面にあいた微小な孔や引っ掻き傷の観察からも、動物が食べていたものの成分の情報が得られる。もう1つの方法は、ヘルクリーク累層から出土したほかの化石の骨に残る噛み跡に、今回見つかった歯の形や大きさに合うものがないか探すことだ。(参考記事:「T・レックスのメニュー拝見、ときには共食いも」

 この研究には、もっと広い意味があるかもしれない。カナダ、アルバータ大学の古生物学者フィリップ・カリー氏は、これまでに同じ年代の岩石中から見つかった多くの「謎の獣脚類恐竜の歯」を再検討したいと言う。今回の発見と考え合わせると、これらの謎の歯はパキケファロサウルスのものである可能性があるからだ。(参考記事:「恐竜から深海魚まで、世界で活躍する若き日本人研究者」

 エバンス氏も同じ意見だ。「パキケファロサウルスの歯が顎とは別に発見されていたら、そのような歯はおそらくたくさんあるでしょうが、小型の肉食恐竜の歯と誤解されてしまうでしょう」

「なかでも風変わりなのは、顎の正面の歯が、少なくとも部分的にはくちばしによって補強されていたことです」とカリー氏は言う。「この恐竜たちの食べ物についてはずっと不思議に思っていましたが、顎の奥の方の歯は明確に草食であることを示しています。問題は、肉食恐竜のような前歯がなぜ必要だったかということです」(参考記事:「恐竜時代のサメ、空飛ぶ翼竜を食べていた」

【参考ギャラリー】決定版!奇跡の恐竜化石たち 写真23点(写真クリックでギャラリーページへ)
『ナショナル ジオグラフィック』2007年12月号の表紙を飾ったこの恐竜は、とげやこぶで覆われた頭骨が特徴。当初は新種とされ、ハリー・ポッターの魔法学校の名にちなんでドラコレックス・ホグワーツィア(ホグワーツの竜王)と名付けられたが、後の研究によって、「厚い頭の恐竜」であるパキケファロサウルスの子どもではないかと提案された。(PHOTOGRAPHY BY IRA BLOCK)

 パキケファロサウルスの化石の発掘を手伝ったことがあるカリフォルニア大学古生物学博物館のダニー・アンドゥーザ氏は、ほとんどの科学者は、恐竜をすっきり分類したがると言う。「この研究の面白さは、新たな証拠を利用して、いくつかの仮定に疑問を投げかけた点にあります」

 彼は、今回の研究は野外調査を続けることの重要性を強調するものだと考えている。「これだけ長い間化石が収集されてきたのに、たった1個の新しい標本が、この恐竜集団を見る目をすっかり変えてしまったのです」とアンドゥーザ氏。「実に示唆に富む発見です。できるだけ頻繁に野外調査に出かけ、より広い範囲を探すことの大切さを教えてくれました」

文=John Pickrell/訳=三枝小夜子

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