1億2000万年前のいまの中国東北部にあたる場所で、火山噴火に巻き込まれて死んだ鳥がいた。突然降ってきた火山灰に埋まり、軟組織は腐敗する間もなかった。それから長い時間をかけて、組織は化石へと変化しつつ、保存されてきた。
発見された鳥の化石の中に肺の組織が含まれていたことが、最新の研究で明らかになった。太古の鳥の肺が化石になって発見されるのは初めて。研究成果が学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。(参考記事:「恐竜時代の奇妙な鳥の新種化石を発見、謎深まる」)
今回発見されたのは、白亜紀に生きていた鳥、アーケオリンクス・スパスラ(Archaeorhynchus spathula)。化石には、羽毛とともに多くの軟組織が保存されており、現代の鳥にかなり近い肺を持っていたことが判明した。鳥の肺はとても効率的で、空を飛ぶためにうまく適応している。このような進化を遂げた肺が、これまで考えられていたよりもかなり早い時期に現れていたことを、今回の研究成果は示唆している。
「これまで鳥の肺や呼吸、進化についての知見はすべて、骨格の化石から推測されてきたのですが、それだけでは十分ではなかったことに気づきました」と、中国科学院古脊椎動物学・古人類学研究所の古生物学者で、今回の論文の共著者であるジンマイ・オコナー氏は述べている。
「わくわくするような発見です」と、この論文を査読した米ユタ大学の解剖学者で生理学者のコリーン・ファーマー氏は語る。「この種の恐竜に鳥のような肺が見つかるのは予想されていたことですが、実際に確かな証拠を示したというのはすごいことです」(参考記事:「「始祖鳥は飛べた」説に新たな証拠、骨格を分析」)
肺と飛翔能力の大事な関係
化石になること自体珍しいのに、軟組織の痕跡を残した化石となればなおさら貴重だ。これまでに見つかっているのは、古代魚類の心臓の化石や装甲恐竜のごつごつした皮膚などで、オコナー氏自身も恐竜時代の鳥類の卵胞(受精前の卵子を含んだ袋)を発見した経験を持つ。また、鳥以外の化石化した肺の断片を発見した研究も、過去に3例ある。(参考記事:「恐竜の脳の化石を初めて発見、知能はワニ程度か」)
鳥がどのようにしてこれほどの飛翔能力を獲得したのか。それを知るうえで、鳥類の肺の化石は大変有用である。