マグロの大量不正取引を摘発、違法は合法の倍か

79人を逮捕、タイセイヨウクロマグロの密売量は年間2000トン超

2018.10.24
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保管状態が悪く食中毒の被害者も

 スペイン当局がこの件について、ユーロポールに初めて接触したのは昨春のことだ。海産物市場に供給されているクロマグロが多すぎると連絡。捜査した結果、合法的な漁獲量を上回るマグロを船底に隠して運ぶ漁船がすぐに多数発覚した。これらのマグロを運んでいたトラック運転手は、実際には14トンの積み荷があっても、4トンとしか記載されていない漁獲証明書を提示していた、とアルファロ氏は説明する。同氏は、その手のトラックがマルタの主要な漁業倉庫に到着した現場に居合わせたことがある。(参考記事:「【動画】センザンコウ101匹を保護、密輸船から」

 地下ネットワークで取引される魚はたいてい保管状態が不十分で、急速冷凍もされていない。そのため、少なくとも8件の食中毒の原因になったという。

大型トラックの荷台に積まれたマグロを調べる警察官(Photograph Courtesy Europol)
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 タイセイヨウクロマグロは寿司や刺身で食べられることが多く、日本が最大の輸入国だ。しかし欧州市場も規模が大きく、スペインやイタリアでもステーキなどに使われている。(参考記事:「それでもマグロを食べますか?」

 人間の食欲が、この魚の存続を脅かしている。ICCATは10年前、タイセイヨウクロマグロの資源管理は「国際的な不名誉」だと批判している。当時マグロ資源は大きく落ち込んでおり、野生動物の取引を規制する「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」の対象に加えられる可能性が取りざたされていた。(参考記事:「クロマグロ乱獲の果てに」

 しかし、タイセイヨウクロマグロの保全策が一気に整備され、成果が上がっているとタック氏はいう。厳格な漁獲制限や電子漁獲証明制度の導入により、追跡能力などが向上したのだ。その結果、2005年に約30万トンだった大西洋東部生まれのタイセイヨウクロマグロの成魚集団は、現在では53万トンに上ると、ICCATは推計している(ただし、ピュー慈善団体によれば、この数値には不確定要素が多数ある)。(参考記事:「10年で世界の魚の数を回復できる、研究報告」

 今回のユーロポールの調査結果は、タイセイヨウクロマグロ資源の回復に疑問を投げかけるものだと、タック氏は指摘する。従来考えられていた以上に、乱獲が進んでいる可能性が示唆されているという。

 組織的な犯罪と聞いて、環境犯罪を思い浮かべる人は少ないかもしれない。しかし、それが現実であることが今回の捜査で明らかになったとアルファロ氏は話す。「私にとって、それ以上に重要なことはありません」

【参考ギャラリー】クロマグロ 乱獲の果てに(写真クリックでギャラリーページへ)
大西洋を泳ぐクロマグロ。独特の流線形の体をもち、銀色にきらめく海のサラブレッドだ。長距離を高速で回遊できるだけでなく、冷たい深海でも生きられる。 (Photograph by Brian Skerry)

文=Dina Fine Maron/訳=山内百合子

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