顔を失った女性、顔面移植成功で再出発を誓う

新しい顔が生きる希望をもたらした

2018.10.26
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ドナーからの摘出も含めて31時間に及んだ移植手術が終わり、集中治療室に移されたケイティ。研修医が頭をそっと支えて安定させる。目を保護するため、まぶたは縫い合わされている。顔の移植が終わっても、ケイティにはさらに何回かの手術と何カ月ものリハビリが待ち受けていた。PHOTOGRAPH BY LYNN JOHNSON

 2014年3月25日、当時18歳だったケイティが恋人の携帯電話をのぞくと、そこに別の女の子へのメッセージがあった。問い詰められた恋人は別れを切り出した。傷つき、逆上したケイティは狩猟用の銃を持ち出し、トイレにこもって、自分の顎に銃口を当て、引き金を引いた。

 銃弾は一瞬にして多くのものを奪った。額の一部、鼻、鼻腔、口角をわずかに残して口全体、顎と顔の前面を形作る下顎骨と上顎骨のかなりの部分……。目は残ったが、ゆがんで、ひどい損傷を受けていた。自殺未遂から5週間余り後にオハイオ州クリーブランドのクリニックに転院したとき、ケイティはこうした状態だった。

「今からやりますよ」。2017年5月4日、ケイティの病室に現れた医師のブライアン・ガストマンはそう宣言した。ケイティの顔に残された二つの小さな口角が持ち上がり、笑顔になった。とうとう新しい顔が自分のものになるのだ。

 ドナーの顔面摘出手術が始まって31時間後、表皮の縫合が終わり、顔全体の移植が完了した。集中治療室にいるケイティは、人工呼吸器や点滴のチューブ、さまざまなモニター装置につながれていた。

 手術から2週間ほどたつと、理学療法士がケイティをベッドから起こして、廊下を歩かせ始めた。体は動いていたが、意識はもうろうとしていた。初めて自分の新しい顔に触ったとき、腫れ上がって、まん丸になった感じがした。形成外科医のパペイはかわいい鼻がついたと言ったが、ケイティは気になって母親に尋ねた。もう化け物でも見るように、じろじろと見られない?

人生が中断された時点に戻って

 2017年8月1日、ケイティは退院し、両親は24時間態勢で介護に当たり、忙しい日々が始まった。退院時に毎日服用する薬を書いた2ページ半にもわたるリストが渡された。壁に掛けた特大のカレンダーには予定がぎっしり書き込まれた。理学療法、作業療法、点字のレッスン、言語療法……。

 言語は特に厄介だった。ケイティの口はほとんどがドナーの口だ。舌と上側の軟口蓋だけが残っているが、それらはうまく機能しない。元の顔の筋肉組織はほぼすべて失われ、ドナーの組織に入れ替えられた。ケイティはそれらの筋肉が動いている感覚がないまま、動かす練習をしなければならない。

 点字の学習も続けているが、スタブルフィールド夫妻はケイティの視力回復を諦めていない。夫妻によると、米ピッツバーグ大学のチームが眼球を丸ごと移植する研究を進めていて、10年以内には実施される見通しだという。

 ケイティは人生が中断された時点に戻って、再出発したいと考えている。まず大学教育を受けること。当初はオンラインで受講するつもりだ。卒業後にカウンセリングの仕事をすることも考えている。「いろいろな人に助けてもらったので、今度は私がほかの人たちを助けたい」。自殺をテーマに10代の若者たちに話をし、命の大切さを伝えていきたいという。

※ナショナル ジオグラフィック11月号「新しい顔で取り戻す人生」では、自殺未遂で顔を失った女性が顔面移植を受け、医師たちによって新しい顔を与えられる物語を紹介しています。

文=ジョアンナ・コナーズ /ジャーナリスト

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