【動画】テッポウウオ、人間の顔を見分けて狙撃

角度を変えても成功、「魚の脳は単純ではありません」と研究者

2018.10.22
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オクラホマシティ動物園のテッポウウオ。口から水を噴射して獲物を撃ち落とすテッポウウオは10種知られている。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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「魚の脳は哺乳類の脳とは大きく違っていますが、単純ではありません」とシュリュッセル氏は言う。

 彼女はサンゴ礁の掃除魚(クリーナーフィッシュ)を例にとって説明する。掃除魚は、ほかの魚の古くなった皮膚や寄生虫を食べる魚の総称だが、彼らは自分が掃除をする数百種、ことによると数千種の魚を識別することができる。そんな魚もいるのだから、テッポウウオが1人の人間の顔を覚え、その記憶をもち続けることができても不思議はないではないか?(参考記事:「「鏡の中の自分」がわかる魚を初確認、大阪市大」

 テッポウウオと同様、ハトとミツバチも、角度によって見え方が変わる人間の顔を認識できることが示されている。人間の顔をどれほど認識するかは動物の種類や実験条件によって異なるが、こうした動物は、哺乳類がもつような大脳新皮質に頼らずに、見慣れない物体を識別できる。それはつまり、脳の大きさや形が認識能力の普遍的な指標ではないことを教えてくれる。(参考記事:「犬は人に「戦略的なウソ」をつく、実験で証明」

「科学者にとっての大きな問題は、魚に知性があるかどうかではありません」とニューポート氏は言う。「問題は、彼らがより大きな脳をもつ動物と同じやり方で複雑な課題をこなしているのか、あるいは同様の課題をより単純に解決する方法をもっているのかという点にあります」

 今回の論文は、テッポウウオは「霊長類と同様のしくみを用いている」と提案している。

実はできるんです

 テッポウウオが回転させた物体を認識できた理由はもう1つあると思われる。鳥などが空中を3次元的に飛び回るように、魚は水中を3次元的に泳ぎ回ることができる。

 魚は常にあらゆる角度から物体に接近し、接近されているため、少しばかり回転させた物体をテッポウウオが同じものだと認識できるのは当然なのだとシュリュッセル氏は言う。

 彼女はこの研究を意外には感じていないが、非常に価値があるものだと評価する。なぜならこの研究は新たな科学的知識をもたらしただけでなく、一般の人々の動物に対する誤解を解くのにも役立つからだ。

 テッポウウオが、四角形や円などの単純な図形ではなく人間の顔を識別できるという事実は、ヒトとテッポウウオを結びつけやすくする、とシュリュッセル氏は言う。

「ほとんどの人が魚には無理だろうと思っている多くのことについて、実はできると示す良い研究だと思います」(参考記事:「【動画】吸殻を拾い集める「カラス先生」が話題に」

文=Jason Bittel/訳=三枝小夜子

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