【動画】海ぶどうを真似るウミウシ、実は5種

好物の海藻に擬態する珍しいウミウシ、DNA調査で1種から5種へ

2018.10.18
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1種ではなかった

 数十年もの間、藻類に擬態する彼らはタマミルウミウシ(学名:Stiliger smaragdinus)という単一の名前で呼ばれてきた。しかし2015年、マレーシア・プトラ大学の海洋生態学者、リーナ・ウォン氏は、このウミウシはもっと多様なのではないかと考え始めた。ウォン氏はその頃、イワズタ属の海藻を食べるもう1種のウミウシを研究していたため、定期的にマレーシアの海へ行ってはバケツで海藻を集めていた。次第にウォン氏は、自分が見ているのは2種のウミウシだと思えてきたが、当初は賛同を得られなかった。(参考記事:「2種が1つに、“逆転進化”していたワタリガラス」

「専門家の意見を聞こうと上席研究員に連絡しましたが、回答は『どちらもタマミルウミウシだ』というものでした」と、ウォン氏はEメールで述べている。「その返事に納得できませんでした」

ウミウシの新種、Sacoproteus nishae。S. smaragdinusの魚雷のような突起と違い、S. nishaeの背部の突起は小さなキノコに似ている。(PHOTOGRAPH BY LEENA WONG)
ウミウシの新種、Sacoproteus nishae。S. smaragdinusの魚雷のような突起と違い、S. nishaeの背部の突起は小さなキノコに似ている。(PHOTOGRAPH BY LEENA WONG)
[画像のクリックで拡大表示]

 ウォン氏は同僚からクルーグ氏を紹介され、2人は写真や標本を共有して共同で研究することになった。チームは採集したウミウシや博物館の標本を丹念に調査し、DNA配列を決定した。

 その結果、調査したウミウシの中でアオモウミウシ(Stiliger)属に分類される種はなく、タマミルウミウシさえもこの属ではないことがわかった。それどころか、実はタマミルウミウシは5種にはっきり分かれていた。研究チームはこのグループに、Sacoproteusという新しい属名を与えた。ギリシャ神話の海神で、思い通りに姿を変えられたプロテウスにちなんだ名前だ。(参考記事:「【動画】脳のような謎の塊が池に、温暖化で北上?」

 Sacoproteus属のウミウシ5種のうち4種は藻類に擬態し、特定の藻類に合わせた姿をした者もいる。しかも、それぞれの種が、種類の違う“海ぶどう”を突き刺すのに特化した独自の歯を発達させていた。

「ちょうど晩さん会で並べられるナイフのように、このウミウシたちも餌に合わせた歯を備えているのです」とオーストラリア、サンシャインコースト大学の生物学者、ニコラス・ポール氏は言う。同氏は今回の研究に関わっていない。

ギャラリー:姿を隠す動物たち 写真43点(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:姿を隠す動物たち 写真43点(写真クリックでギャラリーページへ)
木の幹に隠れるゾウ、木の葉や枝になりきる昆虫、雪景色にまぎれるキツネなど、自然界にはさまざまな方法で周囲に溶け込み身を守る生物たちがいる。 (PHOTOGRAPH BY AARON M., NATIONAL GEOGRAPHIC YOUR SHOT)

 ウミウシの知られざる多様性が明らかになったことで、さらなる研究の必要が出てきた。例えばクルーグ氏は、変装に長けたウミウシがまだたくさんいて、発見を待っているのではと推測している。(参考記事:「【動画】氷の下を漂う驚異の生命、グリーンランド」

「どのウミウシもサンプルが少なく、十分研究されていません」とポール氏。なかでも、「目につきにくい種は特にそうです」

文=Michael Greshko/訳=高野夏美

おすすめ関連書籍

Jewels in the night sea 神秘のプランクトン

夜の海にあらわれた、美しい浮遊生物。眼には見えないきわめて小さな姿をカメラで覗いてみれば、姿も、色も、生態も、うっとりするほどの世界。28年間、海の神秘を撮る男の渾身の写真集です。

定価:2,970円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加