【動画】海ぶどうを真似るウミウシ、実は5種

好物の海藻に擬態する珍しいウミウシ、DNA調査で1種から5種へ

2018.10.18
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【動画】「海ぶどう」になりきって食事するウミウシ
擬態が巧みなこのウミウシは、何十年もの間1つの種と考えられてきた。

 沖縄名物の「海ぶどう」。だが、海にいるその海藻をよく見てほしい。つぶつぶの海ぶどうの間に、緑色のケープをまとったかのようなウミウシが完璧に隠れていることがある。

 驚異的な擬態をするこのウミウシは、数十年にわたり1種しかいないと考えられていた。しかし、最新の研究によって、実は1種ではなく5種いること、それらは独自の遺伝的性質をもつ新たなグループであることが判明した。(参考記事:「キリンは1種でなく4種との報告、遺伝子解析で」

藻類に擬態するウミウシ、Sacoproteus smaragdinus。長年、アオモウミウシ属と考えられてきたが、新しく記載されたウミウシ4種と共に新属に移された。(PHOTOGRAPH BY LEENA WONG)
[画像のクリックで拡大表示]

 これらの新種は、学術誌「Zoologica Scripta」にこのほど掲載された。擬態するウミウシは、一般に他の動物をまねたり、天敵を寄せ付けない鮮やかな色の体へと進化したりしている。ところが、新たに加わったウミウシは、藻類のような緑色の体をすることで、周囲に溶け込んでいる。こうした擬態の例は、ウミウシではかなりまれだ。

「海ぶどう」が好物

 今回見つかった新種はイワズタ属の海藻しか食べず、マレーシア、オーストラリア、グアム、フィリピンなど太平洋全域で見られる。この藻類のキャビアのような粒状の部分は「海ぶどう」と呼ばれ、人間にとっては珍味とされるが、あえてこれを食べる海洋生物がほとんどいないため、本来の生育域でない海に持ち込まれると、一気に繁茂する。イワズタ属は、水生生物の国際取引などにともなって、地中海から日本まで世界各地の海に広がっている。

S. nishaeのキノコ型の突起が、藻類のスリコギヅタ(学名Caulerpa chemnitzia)に完璧に紛れている。(PHOTOGRAPH BY LEENA WONG)
[画像のクリックで拡大表示]
魚雷のような形から白い先端まで、S. smaragdinusの背部に並んだ突起はクビレズタ(学名Caulerpa lentillifera)のブドウ状の粒と見分けがつかない。(PHOTOGRAPH BY LEENA WONG)
[画像のクリックで拡大表示]

 しかし、一部のウミウシはイワズタ属を食べる。特に、イワズタ属に擬態する種にとっては大好物だ。「この生息地あるいは餌が、(ウミウシの幼生が)成体へと変態する引き金になっていることがよくあります」と話すのは、論文の筆頭著者で米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の海洋生物学者、パトリック・クルーグ氏だ。「化学物質に依存しているようです」

 ウミウシがイワズタ属の藻類にいったん取り付くと、ブドウ状の粒に穴を開け、のどが渇いた子どもがパック入りのジュースを飲み干すように吸い尽くす。近くにいる天敵は、ウミウシにまったく気付かない。丸い粒が並んだウミウシの背面は、海ぶどうを散らしたように見えるからだ。そして、ウミウシは擬態を万全にするため、藻類の緑色の色素を皮膚の中に蓄えている。(参考記事:「光合成をするウミウシが激減、危機的状況、研究に支障も」

ギャラリー:海の小さな人気者 ウミウシ 写真31点(写真クリックでギャラリーページへ)
Chromodoris属の一種 (Photograph by David Doubilet)

次ページ:専門家は同じウミウシだと言った

おすすめ関連書籍

Jewels in the night sea 神秘のプランクトン

夜の海にあらわれた、美しい浮遊生物。

定価:本体2,700円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加