【動画】死骸に産卵するシデムシ、驚異の子育て術

自らの体内微生物で腐敗を抑え、育児部屋と餌を確保するモンシデムシ

2018.10.17
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死骸はみんなのごちそう

 動物の死骸はさまざまな生物にとって魅力的な食料源だ。腐敗に関わる微生物も例外ではない。もし死骸に何の処理も施していなければ、モンシデムシの幼虫が成虫になる前に、細菌や真菌などの生物が消費してしまうだろう。

 シュクラ氏のチームは、それこそがモンシデムシが細菌と真菌(酵母)を豊富に含む分泌液で死肉をコーティングする理由であることを突き止めた。この保護層により、死骸を消費するその他の微生物の増加が抑えられる。さらに、モンシデムシの体液には、望ましくない種の増加を防ぐ抗菌性化合物も含まれていた。(参考記事:「ヒトの死体の骨を食べるシカ、はじめて観察」

 シュクラ氏は研究室内で、モンシデムシがコーティング処理を施したマウスの死骸、および未処理のマウスの死骸の化学的プロフィールを比較する実験を行った。9日後、未処理のマウスは液状化し、白い真菌がたっぷりと生えて、目に染みるほどの悪臭を放つようになった。一方、モンシデムシの幼虫が住んでいるマウスの方は、顔を近付けて深呼吸をしても臭いさえしなかった。幼虫がすっかり成長する頃には、たいてい死骸は食べ尽くされ、骨と体の跡がかすかに残るのみとなっていた。

 研究チームによると、幼虫の育児部屋として使われたマウスでは、腐敗していることを示すプトレシン、カダベリンなどのレベルが低かった。また、腐敗に関わる細菌ではなく、ヤロウィア属と呼ばれる酵母や、有益な真菌に覆われていた。

 オランダ、ライデン大学の昆虫学者、ダニエル・ローゼン氏はこの研究について、「興味深いディテールが明らかになった」としながらも、死骸の微生物を操るこのシステムのカギはまだはっきりとはわかっていないと述べている。例えば、腐敗が止まったのは、モンシデムシの分泌液にいる有益な微生物だけが原因なのか、それとも死骸をかじる幼虫の行動も何らかの役割を果たしているのかはといったことは、まだわかっていない。(参考記事:「共食いするシデムシ、動物界の“悪母”」

 ローゼン氏は言う。「結局のところ、モンシデムシの親が、微生物を加えたり取り除いたりして、どうやって適度な状態に整えているのかはまだよくわかりません。特に、同じ器官によって行われているのは謎めいています」

ギャラリー:姿を隠す動物たち 写真43点(写真クリックでギャラリーページへ)
カマキリの1種、コーンヘッド・マンティス(学名:Empusa pennata)(PHOTOGRAPH BY MEHMET KARACA, NATIONAL GEOGRAPHIC YOUR SHOT)

文=CARRIE ARNOLD/訳=北村京子

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