【解説】同性の両親から子ども、マウスで実験成功

雄同士での成功は初、障壁となる遺伝子領域を削除して結合、中国

2018.10.16
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 2匹の母親から生まれたマウスがおおむね正常に成長し、自分自身で子を作れたとしても、まだ見つかっていない問題に苦しむ可能性があり、健康状態のより詳細な分析が必要だとスラニー氏は言う。また、雄同士から生まれた子マウスがなぜこれほど早く死んだのかも、まだわかっていない。概して雄からの遺伝子は、胚を完全に発達させるためにかなり多くの操作を必要とした、とスラニー氏は述べている。子の生存を妨げているゲノム刷り込み領域がまだあるのかもしれない。

「これら全ての中で、私にとって何よりも重要なのは安全上の問題です」とスーター氏は言う。「なかなか乗り越えられない大きなハードルです」

 もちろん、やがてこの方法がマウスで完全に機能したとしても、人間にまで飛躍させるのは決して簡単ではない。マウスと人の刷り込みパターンがどれほど似ているかは、依然として大きな謎だ。加えて、2011年に科学誌「ゲノム・バイオロジー」に掲載されたある研究は、現在マウスで行われている医学的検査の多くが、人間では「倫理的に不可能」だと指摘している。中国の研究チームは、サルなど他の動物で自分たちの方法に磨きをかけていこうと考えている。

研究へのドアは開くか

 それでも、これら最新の実験から得られた情報は重要であり、発生におけるさまざまな遺伝子の役割を解明するのに役立つかもしれない。

「こうした研究が続けられ、刷り込み遺伝子について多くを学ぶというより、もてあそぶことになったら」とウォード氏は懸念する。ゲノム刷り込みは、形質の発達、疾患、さらには他の不妊治療がどれほどうまく機能するかに関して、幅広く役割を果たすと考えられている。(参考記事:「天才を作り出す?「賢い遺伝子」の研究は是か非か」

 この研究成果によって、米国でも胚性幹細胞と遺伝子編集に関する研究の開始を検討すべきだという要請が、一層高まるかもしれない。米国では、こうした取り組みへの資金は厳しく制限されている上、複雑な法律のネットワークがあり、研究がしづらい状態になっている。

「この種の研究には多くの制約が課されてきましたから、私たちはこの問題を徹底的に考えてはいないと思います」とスーター氏は言う。何が安全とされるのか? どんな理由ならその使用が十分に正当化されるのか? 誰がそのような技術にアクセスできるのか? この技術が倫理的にも医学的にも正しいガイドラインの下で開発されれば、同性カップルに対し、遺伝的につながりのある子どもを持てるかもしれないという希望を与えられるだろう。そして、異性のカップルがすでに利用している妊娠支援と同様の手段を提供できる可能性がある。

「個人的な考えでは」として、スーター氏は話した。「異性カップルが生殖できない場合にテクノロジーによる介入を受けられるべきだと思うなら、同性カップルが同じことをしようとした場合、それに反対する筋の通った主張はできないと思います」

【参考動画】1つの細胞から育つ生命 / 生命は1つの胚細胞から始まり、複製を繰り返して育つ。(解説は英語です)

文=MAYA WEI-HAAS/訳=高野夏美

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