【解説】同性の両親から子ども、マウスで実験成功

雄同士での成功は初、障壁となる遺伝子領域を削除して結合、中国

2018.10.16
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このマウスの赤ちゃんには2匹の父親がいる。この子マウスは誕生することができたが、2匹の父から生まれたマウスは、いずれも生後すぐに死んだ。(PHOTOGRAPH BY LEYUN WANG)
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母親同士のペアから生まれる子ども

 最新の研究で科学者たちが頼ったのが、「半数体の胚性幹細胞(ES細胞)」だ。この細胞は染色体を1セットだけ持ち、精子または卵細胞から培養され、問題となる遺伝子タグの数を減少させる。

 次いで研究者らは、CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)という「分子はさみ」を使い、刷り込みによって問題を起こすことがわかっている部分を切断した。雌のマウスのペアでは、健康な子どもを産ませるには3カ所を削除する必要があった。雄のマウスのペアでは、7カ所を切断しなければならなかった。(参考記事:「生命を自在に変えるDNA革命」

 雌マウスの場合、次のステップは比較的シンプルだ。変更された幹細胞を、手を加えていない未成熟卵に移す。論文の著者、バオヤン・フー氏はEメールで、「この段階の卵は、ゼリー状のコーティングで保護されているおかげで、触手のないクラゲのように見える」と語っている。そして、卵は成長のために代理母マウスに入れられる。

 しかし雄の場合は少々厄介だった。

「個体ができるには卵がなくてはなりませんが、雄には卵がありません」と、この研究に関わっていない米テキサス大学の発生生物学者、リチャード・ベーリンガー氏は語る。そこで研究チームは、未成熟卵から遺伝物質の大半が収められている核を取り除き、精子と半数体ES細胞を注入した。

 まずわかったのは、こうして改変した卵を子宮に挿入しても成長しないということだった。そのため、子宮外で育ててから、成長中の子を最終的に代理母に挿入する必要があった。

 困難はある程度予想されていた。雄同士が雌との関わりなしで子を生み出すのは自然界では非常にまれだと、筆頭著者のリ・ジクン氏は指摘する。氏はEメールで、「私たちは研究にとりかかる前、父親同士の生殖が可能かどうかさえわかりませんでした」と記している。

倫理上の大きな疑問符

 2匹の雌マウスから生きた子マウスが生まれたのは初めてではない。2004年にある研究チームが、類似の遺伝子編集技術を用いて、初めて雌同士のペアから子どものマウスが誕生したと発表した。

「中国のチームは、さらに先へ進みました」。米ハワイ大学のモニカ・ウォード氏は新しい研究についてこう語る。今回、研究チームはこの方法を改良し、半数体ES細胞を用いて雄由来の子に適用しただけでなく、さまざまな刷り込み領域を取り除くことによる影響も分析しようとした、とウォード氏は話す。

 雌同士の子の場合、第3の刷り込み領域を切り取ると、正常な速さで子が成長できるようになると見られた。雄同士の子の場合は、7番目の刷り込み領域を削除すると、子は生まれるまで発達を続け、6カ所の削除で見られる腫れや呼吸の問題が軽減された。

 この論文を査読した研究者たちは、全体として研究の厳密さを称賛している。「これ以上厳密にやるよう彼らに要求することは想像できません」と、ベーリンガー氏は言う。しかし、この方法が将来どのように使われるのか、それが人にとって何を意味するのかは不透明だ。

「倫理の点で、本当に大きな疑問符が付きます」とウォード氏。

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