水中を「歩く」魚たち

 ここでの言葉の定義は重要だと、米ニュージャージー工科大学の魚類生体力学の専門家、ブルック・フラマング氏は言い、「“歩いている”とは、自分で自分の体重を支えているということです」と指摘する。そして、水中では生物の体重が浮力でいくらか支えられているため、「歩行」という言葉は決して当てはまらない、と話す。

 厳密には「歩行」に含まれないかもしれないが、サメ、エイ、ハイギョなど数種類の魚類は、水中で歩くような動作をしばしば見せる。いつもは水中で体を前進させているヒレが脚の代わりになり、海底を伝って動き回ることを可能にしている。その様子は、四本脚の動物が陸上を歩くのとほぼ変わらない。

 しかし、横倒しになったカレイの体では、ヒレの位置が他の「歩く」種と違っており、海底での移動を支えられる位置にない。ならばなぜ、この型破りな生物は海底を動き回ることができているのか、フォックス氏は疑問を抱いた。

 解明のため、フォックス氏は6種のカレイを米国ワシントン州のピュージェット湾で採取。ワシントン大学フライデー・ハーバー研究所にある水槽の底で巧みに動く様子を映像に収めた。驚いたことに、カレイが移動するときに鰭条を伝わっていく規則的な動きは、ヤスデの運動に匹敵するものだった。(参考記事:「【動画】鉄壁の守り? 赤ちゃんヤスデの集団戦法」

カレイは、世界で最も非対称な生物の一つだ。写真はヌマガレイ。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
[画像をタップでギャラリー表示]

 カレイとヤスデが移動に関して同じ方法を見出していたという考えは興味をそそると、フラマング氏は話す。「地面から体を持ち上げ、体を引きずることなく動けることには、運動上の利点があるようです。水中だろうと陸上だろうと」とフラマング氏。

「形態が大きく異なるたくさんの生物が、歩くという行動を行います。したがって、その方法の比較は、実に面白いテーマなのです」

文=Erica Tennenhouse/訳=高野夏美