地球温暖化の影響は想定より深刻、IPCCが警告

1.5℃上昇で状況は大幅に悪化、2030年には1.5℃に達する可能性も

2018.10.11
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前代未聞の努力が求められている

 今回IPCCが公表した特別報告書には、温暖化を1.5℃に抑えるさまざまな方策が列挙されている。どの方策においても、化石燃料の使用を15年以内に半減させ、30年以内にはほぼ完全にやめるという、前代未聞の努力が求められている。つまり、家庭や企業や工場でのガス・石油による暖房をやめ、ディーゼル車やガソリン車はなくなり、石炭・天然ガス発電所は閉鎖され、石油化学産業はすべてグリーンケミストリー(有害な物質をなるべく使わず、生み出しもしない化学産業)になり、鉄鋼・アルミ製造業をはじめとした重工業では炭素フリー燃料の使用、あるいはCO2回収・封じ込め技術を採用するといった具合だ。(参考記事:「カナダのCO2回収貯留施設が1周年、普及の鍵は」

 それに加えて、CO2排出削減のスピードにもよるが、2050年までに100~700万平方キロの土地をバイオ燃料の原料となる農産物用に転換し、1000万平方キロ分の森林を増やす必要があるかもしれない。しかも、それですら不十分だと報告書は警告する。過去100年の間に排出されたCO2は、今後数百年にわたって大気中で熱を封じ込めるだろう。そして、2045年ないし2050年ごろまでは、大気中に留まるCO2がそれでも多すぎるため、気温上昇幅を1.5℃に抑えるには、森林など何らかの方法でCO2を回収する必要があるという。

 特別報告書の内容は、医師からひどい診断書を突きつけられたようだと、米テキサス工科大学の気候科学者であるキャサリン・ヘイホー氏は表現する。「あらゆる検査を行いましたが、結果は思わしくありません、と医師であるIPCCから言われ、複数の治療計画を提示されています。患者である私たちは、治療方法を決めなければなりません」

 気温の上昇を2℃以内に抑えるのは大変だ。化石燃料を使った施設を閉鎖して、非化石燃料に転換し、大気中から大量のCO2を回収する必要がある、と話すのは、ノルウェーの国際気候環境研究センターのグレン・ピーターズ氏だ。「気温の上昇を1.5℃未満に抑えるには、2℃に抑える場合よりも、より速く、より広くやらなければなりません」

 だが目下のところ、私たちは誤った方向に進んでいる。CO2の排出は2017年に1.5パーセント増えてしまい、今年も増加が続くとみられている。「技術的にも社会的にも政治的にも、総力を挙げて取り組まない限り、1.5℃はおろか、2℃の上昇に抑えることさえ難しいでしょう」(参考記事:「温暖化対策の主導権が中国へ?トランプ大統領令で」

 1.5℃以内に抑えるには、現状の方針を大きく変えなければならないと、世界資源研究所グローバル気候プログラムの上級参与であるケリー・レビン氏も認める。その上で同氏は、IPCCは比較的安価な解決策を優先して提示しており、CO2排出削減の方法は他にもあると言う。

 例えば、世界中の人々が肉食やモノの消費を減らせば、排出は大幅に減らせるだろう。また、新たな技術の開発についての予測は控えめであり、太陽光発電や電気自動車の効果を過小評価しているとレビン氏は言う。テスラ・モデル3の価格は同種の従来型ガソリン車の2倍以上だが(しかも納車に時間がかかる)、米国内での9月の月間販売台数で4位となっている。(参考記事:「ソーラー道路の開発進む、仏は5年で1000kmに」

ギャラリー:豪雨、竜巻、雷、台風…異常気象の衝撃写真13点(写真クリックでギャラリーページへ)
「スーパーセル」と呼ばれる巨大積乱雲による雷雨がサウスダコタ州を襲う。スーパーセルは非常に激しい気象現象をもたらし、強風やあられ、時には竜巻を伴うこともある。 (PHOTOGRAPH BY JIM REED, NATIONAL GEOGRAPHIC)

もっと森林を

 CO2の削減には、森林がもっと大きな役割を果たす可能性もあると、米バージニア大学の森林の専門家であるデボラ・ローレンス氏はインタビューで述べている。「森林は現在、大気中のCO2を約25パーセントも吸収して、温暖化防止に大いに貢献しています」

 植林をして、森林の管理を改善すれば、2030年までに必要とされる削減量の18パーセントを森林が担ってくれるとローレンス氏。氏によれば、ブラジル、中国、インド、メキシコ、オーストラリア、米国、ロシア、EU(欧州連合)は、大きな経済的負担なしに、しかも食料生産に悪影響をおよぼすことなく、森林を増やせる。そのおかげで何十億トンものCO2の削減が期待できることを、今後の研究で示す予定だと話す。とりわけ熱帯雨林の保護と拡大はきわめて重要だという。大気を冷やし、食物の生育に必要な降雨をもたらしてくれるからだ。(参考記事:「世界はアマゾンを救えるか、はびこる闇と負の連鎖」

 老齢林を家具や建築資材として使えば、CO2を長い間その中に封じ込めることになる。そうした考えのもと、米オレゴン州のポートランドでは2019年に木造12階建てビルが完成する予定で、オーストリアのウィーンでは木造24階建てビルの建設が進んでいる。

 森林科学者らは合同声明を発表し、温暖化を防止するために現存する森林を保護すべきだと警告した。その声明には、現在利用できる石油や天然ガス、石炭よりも、世界の森林のほうがより多くの炭素を含んでいると書かれている。

「地球の未来の気候は、森林の未来と密接につながっているのです」

文=Stephen Leahy/訳=吉村裕子

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