エーレット氏とハレル氏はさらに調査を進めるため、博物館に所蔵されている肉食魚の顎の化石をかき集め、プテラノドンの骨に付いたかみ痕と比較した。そして、くっきり刻まれた4本の溝とのこぎりで引っかいたような浅い傷が、サウロドンとスクアリコラックスの歯並びとほぼ一致することに気づいた。
エーレット氏によれば、アラバマ州で発掘された白亜紀後期のウミガメや恐竜の化石に、サメにかじられたと思われる「捕食の痕」がよく残されているという。当時、アラバマ州の一部は温暖な浅瀬で、北米大陸を東西に分断する巨大な内海である西部内陸海路の入り口となっていた。(参考記事:「大絶滅を生き延びた角のある古代ザメ」)
化石を見る限り、この豊かな海ではサメが繁栄していたようだ。「私は世界中で化石を集めていますが、サメの歯がこれほど多い場所は知りません」とエーレット氏は話す。「さまざまなサメがこの海域に生息していたようです」
翼竜は狩られたのか?
白亜紀後期には、プテラノドンも沿岸に暮らし、サメだらけの海から小さな魚を捕まえていた。ハビブ氏によれば、翼竜は水に浮かべたが、鳥ほど浮力はなく、おそらく水面に長くはとどまれなかっただろうという。プテラノドンを含むいくつかの種は、海に飛び込んで獲物を捕まえていたようだ。
「彼らは水面から素早く飛び立つことができました。しかし、水に潜った直後、サメに狙われていた可能性があります」
エーレット氏は化石のプテラノドンについて、生きているときに魚が海から飛び出して捕まえたか、水面で捕らえた可能性は十分あると考えている。ただし、化石1つで断定するのは難しいとも述べている。別の可能性としては、プテラノドンが海辺で命を落とし、沖に流された後に食べられたとも考えられる。(参考記事:「巨大翼竜は飛べなかった? 島で独自に進化か」)
断定が難しい理由の1つとして、翼竜に詳しい英ポーツマス大学のマーク・ウィットン氏は、かみ痕の付いた翼竜の化石がとても珍しいことを挙げている。翼竜の骨は中空でもろいため、サメにかみつかれると、砕けてしまう可能性が高いのだ。(参考記事:「史上最多、215個の翼竜の卵を発見、中国」)
「記録は少ないですが、徐々に増えています」。ウィットン氏はハビブ氏と共同研究を行い、論文を発表することになっている。体長7メートルにも達する巨大なサメ、クレトキシリナの歯の痕がついたプテラノドンの脊椎骨に関する研究だ。
プテラノドンの化石は知られているだけで1100以上あるが、おそらく5つくらいはサメにかまれた証拠が残っていると、ウィットン氏は見積もっている。そのほとんどがまだ詳しく調べられていない。
エーレット氏とハレル氏の研究をウィットン氏は高く評価している。「(彼らは)見事に(捕食)動物たちを特定してみせました(中略)このように、どの種が関わり合っていたかが判明したのは素晴らしいことです」