40億年前の地球は生命誕生の「温床」だった

地球のタイムカプセル「ジルコン」から探る生命の起源

2018.09.27
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ジルコンに含まれる40億年前のヒント

 その答えを求めてトレイル氏のチームが注目したのが、ケイ素と酸素だ。ケイ素と酸素は、両方合わせると、今日の地球に存在する岩石のほぼ75パーセントを占める。この二つの元素にはまた、調べがいのある特性がある。ともに、同位体を持つことだ。

 岩石ができたり変性したりすると、そこに含まれる同位体の特性が変化する。よってたとえば、溶岩が冷えてできる岩と、風雨にさらされた岩から採取される粘土とでは、含まれる同位体の特性は大きく異なる。そしてジルコンは、地球初期の堆積物の特性を今も有している。

 ジルコンに含まれるケイ素と酸素を精密に分析するため、研究チームは、米カリフォルニア大学にある高解像度イオンマイクロプローブを使用した。電荷を帯びた原子のビームを微小なサンプルに当て、跳ね返ってくるイオンを計測するものだ。

衛星「アスター」がとらえた、オーストラリア、ジャックヒルズ地域の画像。ここは知られている限り最古の地殻で、44億年近く前のジルコンが含まれている。(PHOTOGRAPHY BY NASA/GSFC/METI/ERSDAC/JAROS、 AND U.S./JAPAN ASTER SCIENCE TEAM)
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 研究チームは今回の分析のために、オーストラリア西部のジャックヒルズ地域から、40億年以上前のジルコンだけを採取した。ジルコンひとつの大きさは、幅が100ミクロン、つまり人間の髪の毛程度だ。研究者らはこの古代の鉱物の化学的性質を、性質がよくわかっているジルコンと比較し、同位体の割合の違いを解釈するための手がかりとした。(参考記事:「地球最古の地殻、44億年前と年代特定」

水と岩の相互作用があった

 分析にかけられた古代のジルコンの半分以上が、初期にさまざまな環境下において、水と岩の間で相互作用があったことを示していた。

 一部のジルコンには、岩が水にさらされて粘土となった化学的痕跡が見られた。このほか、融解した鉱物の痕跡を含むジルコンもあった。こうした融解鉱物は、湖や海の中で結晶化して、チャートや縞状鉄鉱床のような岩を形成する。また別のジルコンからは、蛇紋岩化と呼ばれるプロセスの痕跡が見つかっている。蛇紋岩化の過程では、水が鉄やマグネシウムの豊富な岩と反応し、水自体が鉱物組織の中に取り込まれる。(参考記事:「海底下1万mに生命か、深海の火山から有機物」

 さらに重要なことは、これらそれぞれのプロセスが、新たな環境的ニッチを生み出していた可能性があることだ。つまり、初期の生命が誕生する温床、生化学反応が起きる環境となっていた可能性が出てきた。

「これは見事な結果です」と、米カリフォルニア大学の地球科学者、エリザベス・ベル氏は言う。ベル氏は、2017年の研究において、41億年前のジルコンから生命の痕跡を発見している。今回の研究成果は、ベル氏の発見をはじめさまざまな初期地球の解釈を裏付けるものだ。「すべてがちょうどいいところに収まったという印象です」

 トレイル氏は言う。「わたしたちは今、非常に興味深い地点にいます。地球が40億年前にどんな姿だったのか、その全貌がいよいよ見え始めようとしているのです。実にわくわくしますね」(参考記事:「最新研究で見えてきた「生命の星」地球のレシピ」

文=MAYA WEI-HAAS/訳=北村京子

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