謎の古代生物の正体は「動物」と判明、地球最古級

5.7億年前の生物ディッキンソニアの化石から、なんとコレステロールが

2018.09.21
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 今回の研究のすばらしさの1つは、分析法の見事なシンプルさにある。米スタンフォード大学の細菌学者ポーラ・ウェランダー氏は、今回の研究には関与していないが、「彼らは、非常にクリエイティブな方法でこの問題に取り組んだと思います」と評価する。「ときどき『なぜだれも思いつかなかったのだろう?』と言いたくなるようなシンプルな研究がときどき現れますが、彼らの研究もその1つです」

 英オックスフォード大学の古生物学者で数学者でもあるレニー・ホークセマ氏は、今回の研究には関与していないが、彼らの手法は、ほかのエディアカラ生物群の理解にも役立つはずだと期待する。彼女が特に関心を寄せているのは、ディッキンソニアと類縁関係があると思われる、羽根に似たランゲオモルフ(rangeomorph)の化学分析だ。実際、ランゲオモルフはブロック氏らの次のターゲットの1つである。(参考記事:「謎の古代生物タリーモンスターの正体がついに判明」

 ホークセマ氏は、「非常に面白くなってきました」と言う。「70年にわたる論争の果てに、ついにエディアカラ生物群の性質が解明されようとしているのです」

なぜこんなに長く残存できたのか?

 すべての有機物は時間とともに分解してゆく。コレステロールも例外ではない。けれどもブロック氏によると、コレステロールの分解産物は非常に特徴的で、これらの分子化石の中には今でも「コレステロールのオリジナルの骨格」が保存されているという。

 古代の痕跡を正確に解釈するために、今日の生物によるステロールの産生やその機能について調べているウェランダー氏は、今回の研究の厳密さを高く評価する。

 もちろん、科学の世界に絶対はない。今回の研究は、動物のみがコレステロールを作るという前提に基づいている。ウェランダー氏は、現在のデータからはこの前提は妥当とされるが、今後、地球上のさまざまな生命についての知識がもっと増えれば、前提が覆される可能性もあると指摘する。

 ボブロフスキー氏は古代生物の研究について、「たくさんの不確実性があります」と認めながらも、「バイオマーカーを用いることで、不確実な部分の大半を取り除くことができます」と言う。

 ドローザー氏は、「ほかの証拠と考え合わせると、ディッキンソニアが動物ではないと主張することは困難でしょう」と言う。

ディッキンソニアは地球で最初の動物だったのか?

 最初の動物が現れた時期は厳密にはわかっていないものの、その痕跡から6億年以上前であったと考えられている。とはいえ、今回動物であることが確認されたディッキンソニアは、これまでに発見された最古の動物の1つである。今日の軟体動物に似たキンベレラ(Kimberella)という動物や、曲がりくねった痕跡を残したミミズに似た動物も、ディッキンソニアと同じくらいの時代に生きていたと考えられている。

 今から約5億4100万年前、グニャグニャしたエディアカラ生物群は、カンブリア爆発によって誕生した、棘や鎧で武装した動物に追われて姿を消した。(参考記事:「夢に出てきそう? 不気味な深海のモンスター」

 これらの太古の生物は、今日の地球上を泳ぎ、跳ね、飛び、走り、歩き回る多様な生物に関する理解を深めるのに役立つ。ドローザー氏は、「地球上の生命の多様性と、彼らがさまざまな環境に適応している様子には、驚嘆せずにいられません」と言う。「けれどもそれは、この10億年の間に起きた進化と絶滅の結果なのです。エディアカラ生物群は、その始まりなのです」

文=Maya Wei-Haas/訳=三枝小夜子

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