満月のとき、月は太陽から見て地球の反対側に位置し、地球から月の方向に尾のように伸びる磁気圏の中にすっぽりと入り込む。この磁気圏は、太陽から絶えず放出される高エネルギーの太陽風から月とそれを取り巻く弱い電離層を保護してくれる。(参考記事:「未知の「紫のオーロラ」、はじめて報告される」)
この短い時間を狙って、アルテミスの探査機は太陽光が当たる月面の昼側から飛来するプラズマ波を計測し、これまでで最も詳しい月の電離層の姿をあぶりだした。その結果、月の電離層は地球の電離層の約100万分の1の薄さであることがわかった。
薄いとはいえ、地球の裏側に隠れているとき、月のプラズマの密度は周辺よりかなり高くなっていた。このことから、月の電離層は地球の保護を受けているときにより強力になることがわかった。(参考記事:「地球磁気圏の影響で満月が帯電」)
ハレカス氏は、この現象を「月の周りに泡立つ小さなプラズマの素」と説明する。
プラズマが地球と月を結ぶ
ここで重要なのは、月のプラズマが地球や太陽からやってくるプラズマをかき乱し、周辺の環境を目に見えて変化させているということだ。地球と月はプラズマをやり取りしてつながっているとも言われ、実際過去の研究ではそれを示す暫定的な証拠も提示されている。
だが、この月と地球のつながりや、それがふたつの天体にとって何を意味するかについては、今のところ想像の域を出ない。今後より進歩した探査機が打ち上げられない限り、答えはわからないだろう。
また現段階では、月で起こっていることがほかの岩石天体にも当てはまるかどうかも不明だ。太陽系内にある他のほとんどの小惑星や衛星は月よりも小さく、その外気圏も月より薄いだろうと、英ロンドン自然史博物館の惑星科学教授サラ・ラッセル氏は言う。
それに、太陽からもっと離れている天体は太陽光線の量も少なく、外気圏は月のように電離できないかもしれない。以上のことから、たとえほかの岩石天体が電離層を持っていたとしても、月のそれよりもさらに弱いと考えられる。
ともあれ、「月に奇妙な電離層とは、とても魅力的」とハレカス氏は語る。「月なんて空に浮かんだ大きいだけの退屈な岩石などとは、これで思えなくなりますよ」
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