BFRとは何か?
マスク氏はもともとBFR(ビッグ・ファルコン・ロケット)を地球人が火星に移住する際の主な輸送手段にしようと構想していた。高さ60メートル強、直径9メートルの第1段ブースターと、その下の数十のラプター(ロケットエンジン)がついたBFRはかなりの大きさになるだろう。BFRは150トンの重量を地球周回軌道にのせ、火星に向けて宇宙船(100人が搭乗可能)を送りこむ。(参考記事:「2024年に人類を火星へ、米スペースXが発表」)
つまり、このロケットは月に到達したり、宇宙ごみを一掃したり、地球のある地点から反対側の地点まで約30分で人を運んだりするのに、十分な能力をもつはずだ。いずれも、マスク氏がやりたいと公言していることだ。
以前にも月旅行の計画を発表していたのでは?
その通り。2017年2月、スペースX社は匿名の宇宙旅行者2人が月旅行のチケットを買ったと発表している。地球の衛星の周囲を回って帰還するという計画だった。同社のロケット「ファルコンヘビー」と、乗員カプセル「ドラゴン」を使った1週間ほどの日程で、2018年の実施が予定されていた。その時点でファルコンヘビーはまだ飛行していなかったが、計画の発表後、スペースX社は試験的な打ち上げに成功している。(参考記事:「スペースXの最新ロケット、ここがスゴイ」)
では、従来の計画はまもなく打ち上げ?
そうもいかない。後にマスク氏は、BFRを製造する間、この月旅行計画が延期されていると発表した。また「現時点で、ファルコンヘビーで有人宇宙飛行が確実にできる計画はない」と話している。一方、乗員カプセル「ドラゴン」はまだテスト中で、NASAは2019年前半にも初の商業クルーを乗せた試験飛行を計画している。
今回の新しい計画は、以前のものとどう違う?
まず、最初の計画が発表されたとき、スペースX社は2人の契約者が誰なのか公表しなかった。今回、同社は搭乗者が誰なのか、その人物がなぜ月へ行きたいのかを明らかにしている。加えて、月の周回に使われるのは、まだ存在しないロケットだ。そして「ドラゴン」の代わりに、やはり開発中の「ビッグ・ファルコン・スペースシップ」に前沢氏らは乗り込むことになる。(参考記事:「億万長者たちの宇宙開発競争 勝つのは誰?」)
いつ実現しそうか?
スペースX社は、実施を2023年と計画している。しかし、ロケットと乗員カプセルの設計、製造、試験、そして打ち上げにどれだけの時間がかかるかを考えると、近いうちに実現する方には賭けられない。また、どんなアーティストが大富豪の月旅行の同行者として検討されうるのか、マスク氏も前沢氏も今のところ明かしていない。スペースX社が詳細を発表する用意ができるまで、まだ世界は待たねばならないようだ。