【動画】ゾウが死ぬとその巨体はどうなるのか

死後、腐肉食動物のエサになるまでの一部始終を目撃した貴重映像

2018.09.13
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死骸がつなぐ生命

 ハゲワシは、人間に生息地を脅かされたり、毒殺されたりして生息数が激減している。ゾウの死はハゲワシにとってごちそうであり、ハゲワシたちの未来を大きく左右するのだ。

 大型動物が死ぬと、ハゲワシは素嚢(食べ物を一時的に貯蔵しておく器官)にできるだけたくさんの肉を詰め込んで、ひなの待つ巣に持ち帰る。ヴィラニ氏によれば、ハゲワシは1年の半分を子育てに費やしているため、大きな獲物をたくさん見つける必要があるという。(参考記事:「2016年1月号 ハゲワシ “嫌われ者”の正体」

 ゾウの肉は、毎日のように転がっているわけではない。しかも、アフリカでは、かつて数百万頭いたゾウが数十万頭に激減している。動物の死肉を食べるハゲワシは、ゾウやヌーといった大型動物の群れのそばで生きてきた。そのため、これらの大型動物が減れば、その影響を直接に受けるのがハゲワシなのだと、ヴィラニ氏は指摘する。

 動物たちがゾウを食べつくすと、今度は死骸の生分解を助ける生物たちが、残りの肉をすっかりきれいに片付ける。

「しばらくするとウジがわき、やがて体は全てウジで覆われてしまいます」と、プール氏。

 死骸の下の土には、腐敗の過程で流れ出たゾウの血液や体液が浸み込み、肥沃な土壌となる。こうして、土に栄養を与える微生物の働きも活発化する。仲間の死を悼みにやってきたゾウが落とすフンも、フンコロガシやそのほか無数の小さな生き物のエサとなる。

 空から小型飛行機でゾウの数を数えるグレート・エレファント・センサス計画は、このような腐敗現場を探し出し、生きているゾウと死んだゾウの数を調査した。ゾウの専門家イアン・ダグラス・ハミルトン氏は、生きているゾウの数に対する死骸の数の割合を「死骸比」として表し、個体数の把握に努めている。気持ちの良い調査ではないが、実態はつかみやすい。

 例えば、2016年の実態調査では、ボツワナでのゾウの死骸比は7%と、比較的少なかった。これに対して、モザンビークの死骸比は32%と高い。死んだゾウが少ないということは、密猟も少ないことを意味する。ちなみに、2018年9月のボツワナでの調査では、象牙のないゾウの死骸が87体確認され、保護団体は衝撃を受けている。(参考記事:「鼻を失った赤ちゃんゾウ 生き延びられる?」

 現在、アフリカゾウは危機的な速さで数が減っているが、いずれこの影響は周囲の環境や他の動物にまで及ぶことになる。

 プール氏は言う。ゾウの死骸はあっという間に消えてなくなってしまうが、「死骸に集まる動物たちは、生態系にとっては非常に重要です。生物の多様性を維持し、命あふれる自然を保つためにも、彼らまで失われるようなことが起きてはいけません」

【参考動画】生態系の嫌われ者「ハゲワシ」
動物の死骸の中にカメラを入れ、死肉をあさるハゲワシを鳥の視点で撮影したり、闇市場で売られていたハゲワシの体の部位を目にしたことなど、ナショナル ジオグラフィックの取材でハゲワシを撮影しながら味わった体験を、写真家のチャーリー・ハミルトン・ジェームス氏が語る。(解説は英語です)

文=Erika Engelhaupt/訳=ルーバー荒井ハンナ

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