イルカに化学物質が蓄積、プラスチック添加剤

生殖への影響や発がん性も懸念されるフタル酸エステル、米国

2018.09.12
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 イルカは食物連鎖の上の方に位置し、寿命が長く、また市街地の沿岸を泳ぐことが多いため、「生態系の指標に適しています」と、米サバンナ州立大学のイルカ研究者、タラ・コックス氏は述べる。なお、同氏は今回の調査には関わっていない。

「環境中で今、何が起こっていて、何が人間に影響しるのか、彼らを通して知ることができるのです」とコックス氏は言う。(参考記事:「マイクロプラスチックの健康への影響は?」

 あるフタル酸エステル化合物の研究によると、ラットを長期間、特定のフタル酸エステルにばく露しておくと、肝臓がんが発生し、生殖にも問題が生じる。

 ハート氏の研究は、フタル酸エステルが健康に及ぼす影響と、フタル酸エステルが環境中でどうやって広まるのかを調べるプロジェクトの一部だ。プロジェクトはいまも進行中で、同氏はさらに、大学生を被験者として、フタル酸エステルへのばく露リスクを高める行動についても研究してきた。

 実験では、シャンプーやせっけん等、フタル酸エステルを含む製品を使わないようにしてもらうと、体内のフタル酸エステルの量が減少したケースもあった。

 フタル酸エステルの危険性についてはまだまだわからないことが多いものの、最大の発生源がわかれば、フタル酸エステルへのばく露量や健康被害を減らせるはずだとハート氏は考えている。

 同氏が言うには、フタル酸エステルは「環境中に流れ出していっている」ため、根本的にはこれを含む製品の消費を減らしていかなければならない。(参考記事:「使い捨てプラスチックの削減を、米版編集長が声明」

世界中のイルカで調査を

 研究者たちの次の目的は、サラソタ湾のイルカがどうやってフタル酸エステルを代謝しているのか、またどうやってイルカの体内にフタル酸エステルが入り込むのかを明らかにすることだ。藻類や魚、そしていくつかの無脊椎動物を含む海生生物からもフタル酸エステルがみつかっているため、イルカがそうした生物を食べることによってフタル酸エステルを取り込んでいる可能性がある。

 プラスチックが分解されるとき、水中にフタル酸エステルが放出される。市街地からの排水にこうしたフタル酸エステルが含まれ、海に溶け出しているのかもしれない。(参考記事:「ストローはこうして世界を席巻した、その短い歴史」

 他の地域のイルカを調べない限り、このような問題が世界中に広まっているのか、確かなことはわからない。だがハート氏が言うには、他の地域集団のイルカからこうした化学物質がみつかっても、なんら不思議はない。

 コックス氏もやはり、これはフロリダだけで起こっているわけではないだろうと考えている。「人間が近くに住んでいる場所ならどこでも、似たような化学物質が流出しているのです」

【参考ギャラリー】近い! 優雅で楽しげなイルカたち 写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)
ハラジロカマイルカ(Lagenorhynchus obscurus)は、互いにコミュニケーションを取り合って、カタクチイワシの群れをボール状に追い込む。アルゼンチンのゴルフォ・ヌエボで撮影。(PHOTOGRAPH BY BRIAN J. SKERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

文=Sarah Gibbens/訳=桜木敬子

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