何度見ても面白い!詳しすぎる北京の手描き地図

英国人アーティストが1年間歩きまわり、1000時間をかけて完成

2018.09.11
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フラー氏の地図の中央部分。北京の中心にある紫禁城周辺が描かれている。中央のデザインは、中国伝統の方形のコンパスの中に西洋の羅針図を組み込んだものだ。(ILLUSTRATION BY GARETH FULLER)

 英国の地図アーティスト、ガレス・フラー氏は、1年をかけて徒歩や自転車で北京の街をめぐった。その距離は1300キロを超える。そして1000時間を費やし、驚異的な地図を描き上げた。どこを見ても細部まで遊び心があり、中国の首都の今と未来の姿が描かれている。(参考記事:「米国で見つかった日本の軍事機密「地図」14点」

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万里の長城が地図全体の上の端近くを蛇行し、その上には中国の長寿のシンボルがある。地図が左右対称なのは、北京中軸線と呼ばれる道を反映しているからだ。南北に走るこの道は、13世紀以来、街の成長と発展にとって背骨となる役割を果たしている。(ILLUSTRATION BY GARETH FULLER)

 地図の大きさは縦1.5メートル、横1.2メートル。北京の中心から同心円状に広がる「環路」(環状道路)など、実在のランドマークをもとに大まかに構成されているが、フラー氏が散策して着想を得た風景を盛り込むため、空間はゆがめられている。フラー氏はあらかじめ鉛筆で下描きをしたあと、ほとんど黒インクだけで描いていく。この方法だと描き間違えても消せないが、間違いから新しいアイデアが生まれないか試みているとフラー氏は言う。「ミスが素晴らしい結果を生むことも多いのです」

 フラー氏の最も有名な作品は、2005年の「ロンドン・タウン」だ。制作に10年を費やしたこの地図は、茶目っ気のある文化批評と、自身の個人的な出会いや体験を暗に示す描写にあふれている。地図「北京」もやはりフラー氏個人の目を通して街を描いているが、今回はアウトサイダーの視点から、熱狂的とも言えるほどの勢いがある外国の都市とその文化を理解しようとしている。

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この部分に描かれた中国中央テレビ(CCTV)本社ビルは、地元ではズボンに似ていると思っている人が多い。すぐ右では新しい超高層ビルが建設中だ。中国の伝統的な杯に形が似ているため、ビルの足元にワインボトルがある。(ILLUSTRATION BY GARETH FULLER)

 フラー氏は、2017年に北京に移住するにあたって慎重に考え、下調べにあまり力を入れないことにしたと話す。この街をまず自分自身の感性で把握したかったからだ。「要するに、困難が待つ深みに自ら飛び込んだのです」とフラー氏。その中で、氏は都市を取り囲む交通の激しい環状道路や、中心街の裏通りなど、外国人が通常行かないところによく足を運んだ。「こういうにぎやかな道を、ビーチサンダルをはいた白人男が歩いていると、どう見ても場違いでした」と振り返る。しかし、物珍しげに見られることは何度かあったものの、「人々は信じられないほど好意的で、歓迎してくれました」という。(参考記事:「核シェルターで暮らす中国の人々、冷戦時代の遺物に100万人 写真16点」

 フラー氏による北京の地図には、不確かではあるが希望を込めた都市の未来像が描かれている。ロボットが経営する工場で、従来の車が電気自動車にリサイクルされ、風力発電基地や、トリウムを用いる原子力発電所が電力を生み出している。街の端には何層にも重なった作物の栽培施設があり、そこで育った新鮮な野菜が包装されてドローンで配達されている(ギャラリーを参照)。(参考記事:「脱石炭を図る中国政府、変われない地方の製鉄所」

 この地図が、今の北京の現実を全く無視しているということではない。ある川は汚染で黒くなっているし、別のところでは工場のフェンスに沿って墓石が並んでいる。建設用クレーンは北京の建築ブームを象徴しているが、それによって多くの人々、特に移住者が街の中心部から追い出されている。レンガ造りの壁は、胡同(フートン)という細い路地で営まれていた個人商店が北京市の方針で閉鎖させられ、店先がレンガでふさがれたことを表す。このほか、新旧の伝統が交差する様子も細かく描かれている。昔からの仏教が、今ではテクノロジーと富の信奉へと取って代わっている。(参考記事:「「青空は年に数日」 中国・大気汚染と闘う街」

 北京の街を巡った時間を通じて、都市と自然が相互にどう結びついているかを今までより意識するようになったと、フラー氏は話す。同時に、汚染などの問題のない、より良い未来への想像も広がったという。「暗い未来が待ち受けている可能性というのは、私が描くまでもなく、十分にありますからね」とフラー氏。より楽観的に街を描いたこの地図が、取りうる解決策についての議論を起こせればと、彼は期待している。「中国は巨大な実験場のように感じられます」とフラー氏は言う。「何であれ、この国の人々がすることは、地球の未来にとって大きな意味があるのです」

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文=Greg Miller/訳=高野夏美

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