動画公開はアマゾンの未接触部族を救えるか

「矢の民」と「穴の男」の貴重映像をブラジルの財団が公開、議論呼ぶ

2018.09.05
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フレシェイロス(矢の民)が使う「マロカ」と呼ばれる共同住居。2017年のFUNAIによるジャヴァリ谷先住民区域の調査において、ドローンで撮影。(COURTESY ACERVO/FUNAI)
フレシェイロス(矢の民)が使う「マロカ」と呼ばれる共同住居。2017年のFUNAIによるジャヴァリ谷先住民区域の調査において、ドローンで撮影。(COURTESY ACERVO/FUNAI)
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「矢の民」がいる場所から800キロほど離れたタナル先住民地区に住む「唯一の生き残り」の男性は、今も外部との直接の接触を避け続けている。FUNAIは、彼に種や道具などを置いて贈ったり、保護区の境界付近でパトロールをしたりといった活動を続けるが、そうしたFUNAI職員にも近付こうとしない。(参考記事:「アマゾンの「孤立部族」を偶然撮影、部族名も不明」

コミュニケーションの意思はある

 ペレイラ氏は、FUNAIによる働きかけで男性とはある程度の信頼関係も生まれていると言う。たとえば男性は、パトロールをしていた職員に対して合図を送って、動物を罠にかけたり侵入者を防いだりするために彼が掘った落とし穴を避けるよう伝えてきたという。

ジュタイ川のほとりに置かれた、フレシェイロスのカヌー。(COURTESY ACERVO/FUNAI)
ジュタイ川のほとりに置かれた、フレシェイロスのカヌー。(COURTESY ACERVO/FUNAI)
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 男性は、ヤシの葉の屋根をかぶせた自作の小屋の中に、深く細長い穴を掘っている。FUNAIの職員は、こうした小屋を数十軒発見しており、そのどれにも、中央に特徴的な穴が掘られているという。男性が穴を掘る理由は不明だが、職員の中には、彼の部族で行われていた宗教的な儀式の名残ではないかと考える者もいる。部族の名前がわからないため、職員たちは彼のことを「インディオ・ド・ブラコ(穴の男)」と呼ぶようになった。

「彼と彼の部族に起こったことに対して、どんな方法であれ、私は償わなければならないという義務感を感じています」と、過去13年間、男性の保護を担当してきたFUNAI職員のアルタイル・アルガイエル氏は言う。

 アルガイエル氏は、動画が公開されたことをきっかけに、ブラジル当局がくだんの男性をはじめとする、アマゾンの部族社会を保護するFUNAIの活動を強化することを期待している。

「こうした社会が守られることは、ブラジル人というより人類にとって重大な課題です」と、バイーア連邦大学の人文学教授のフェリペ・ミラネス氏は言う。氏は「唯一の生き残り」の男性がいる保護区の調査にも2度同行しているが、「あの男性のことを、社会から隠れ住む世捨て人のように見るのは間違いです。彼は虐殺から生き延びただけで、自ら1人で生きることを選んだわけではありません」

ジュタイ川のそばにあるフレシェイロスの村で2017年に見つかった斧。フレシェイロスのものか、それとも数年前のFUNAIの調査時に調査チームが残していったものかもしれない。(COURTESY ACERVO/FUNAI)
ジュタイ川のそばにあるフレシェイロスの村で2017年に見つかった斧。フレシェイロスのものか、それとも数年前のFUNAIの調査時に調査チームが残していったものかもしれない。(COURTESY ACERVO/FUNAI)
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「ナショナル ジオグラフィック日本版」2018年10月号では、アマゾンの未接触部族に関する特集記事を予定しています。

文=SCOTT WALLACE/訳=北村京子

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