ヒッグス粒子崩壊を確認、物質の質量の起源を解明

3000人による研究が結実、ボトムクォークへの崩壊をついに観察

2018.09.04
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クォークとどう関係があるのか?

 寿命が数十億年もある電子とは異なり、ヒッグス粒子の寿命は驚くほど短く、10のマイナス21乗秒にも満たない。このわずかな時間が過ぎると、ヒッグス粒子は崩壊してさらに細かいほかの素粒子に変わる。2014年には、LHCの検出器であるATLASとCMSの共同実験チームが、ヒッグス粒子が1対のガンマ線光子へと崩壊する過程を観測したと発表している。(参考記事:「加速器界の革新的発明「新竹モニター」誕生秘話」

 標準モデルでは、ヒッグス粒子がクォークと呼ばれる素粒子に崩壊する可能性も予言されている。クォークには、アップ、ダウン、トップ、ボトム、チャーム、ストレンジという6種類があり、原子をつくる陽子や中性子などを構成している。(参考記事:「ノーベル物理学賞は素粒子理論の3氏」

 ヒッグス粒子の崩壊は、いくつかの重要な法則にしたがって起こるとされている。例えば、ヒッグス粒子は電荷をもたないので、崩壊によってできる粒子の電荷の合計もゼロにならなければならない。ヒッグス粒子が崩壊して電荷をもつクォークになるときには、クォークと反クォーク(電荷が逆である以外はすべて同じ粒子)の対になって現れなければならない。そうすれば、クォーク対の電荷が打ち消しあってゼロになるからだ。

 ヒッグス粒子の質量も、崩壊の起こり方を制限する。標準モデルによると、ヒッグス粒子が崩壊するときには、約58%の確率でボトムクォーク‐反ボトムクォークの対になるという。この予想は標準モデルの検証として重要なので、ヒッグス粒子からボトムクォークへの崩壊が見られなかったら標準モデルは困ったことになっていただろう。

「そうなったら、標準モデルを維持できません」とヘッカー氏は言う。

 ATLASとCMSの実験グループは、実際のヒッグス粒子がボトムクォークへと崩壊する過程を独立に観察して、理論が現実と一致することを示したわけだ。

ギャラリー:ハッブル望遠鏡 50の傑作画像(写真クリックでギャラリーページへ)
エスキモー星雲 NASA, ANDREW FRUCHTER AND THE ERO TEAM [SYLVIA BAGGETT (STSCI), RICHARD HOOK (ST-ECF), ZOLTAN LEVAY (STSCI)]

崩壊はどのようにして検出されたか?

 ヘッカー氏によると、物理学者たちがヒッグス粒子の崩壊を検出することの難しさに気づいたのは、LHCの建造が計画された1980~90年代のことだったという。LHCは、光速に近い速度まで加速した陽子どうしを衝突させてバラバラにする。膨大な数の破片は、巨大な検出器の中で飛び散る。破片にはさまざまな種類の素粒子が含まれ、その多くはヒッグス粒子からボトムクォークへの崩壊とよく似ている。つまり、検出するには雑音が多いのだ。

 物理学者たちは、崩壊によって生成した粒子の検出結果を利用して、衝突がどのように起きたかを精密に再現する。これは、大破した自動車とタイヤ痕から自動車事故の経緯を調査するようなものかもしれない。

次ページ:今回の発見はなぜ重要なのか?

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